N.Y.在住インタビュア&ライターなまずみきの「言葉を力に」

N.Y.在住インタビュア&ライターなまずみきの「言葉を力に」

インタビュー好きフリーライター。企業とのお仕事のほかに「みきてぃ文章SOS隊」隊長として個人事業主をサポート。直感と運で生きている。ブログは遊び場。

3年前:NY転勤には、何も魅力も感じなかった 

3年前、東京に住んでいた私は、夫の転勤でニューヨークに行くことが決まった。それまでの転勤と同じように、異動の通達は突然で、「3ヶ月後に出発」とか、そんな感じだったと思う。

ニューヨーク?

イヤだった。

ニューヨークには何の思い入れも、憧れもなかった。15年ほど前に、旅行で訪れたことはあったけれど、「住みにくそうな都会」というイメージだった。なので、「ニューヨークに転勤」と周りに伝えたときの、「うらやましい!」「訪ねたい!」という反応の大きさに、違和感を抱いたほど。一部の人にとって、「ニューヨーク」は特別な響きらしいけれど、私自身の感情は、一ミリも動かなかった。

当時、息子は9歳、娘は5歳で、息子は「外国なんて行きたくない。パパが一人で行けばいい!」と泣きわめいた。私は、「どこに行っても、楽しさを見つけるのは自分だよ」と説得しながら、自分にも、そう言い聞かせていた。本当は、「そうだよね、ママも行きたくない」と一緒に泣きたかったし、実際に、離れたくない人の前で、泣いた。

 

「離れたら、すべてを失うのでは」という恐怖
 

当時の私は、フリーランスのインタビュア&ライターとして、インタビュー→執筆→納品のサイクルをフル回転しても、すべての仕事を受け切れないほど忙しく、仕事は絶好調だと思っていた。

人間関係もスムーズだった。出発直前には、『みきてぃ送別イベント』というものを企画してもらい、有料にもかかわらず、50名の定員がすぐに満席となった。(当日は、50名の前で「公開インタビュー」「動画ごっこ」など好き勝手にさせてもらい、参加してくれた皆様には今でも感謝)。

日本を離れたら、仕事も、人間関係も、すべてを失うと思っていた。

出発まで、私の気持ちはニューヨークに向くことがなかった。先に生活基盤を整えるためにニューヨークに渡った夫が、マンションの希望などを確認してきても、「どうでもいい」と答えていた。「私はニューヨークに興味ないので」と。

実際、ニューヨークについた時も「なんて、うるさい街だろう」と思った。少し歩いただけで、やたらと疲れる街だった。街と人のエネルギーの強さにやられて、ベッドに横たわりながら、自分が日本で別れを告げてきた仕事や人のことを思っていた。

転勤族であることを知りながら結婚したのは、私の責任だ。いや、むしろ、「飽きっぽい私には、世界を転々とする生活の方がいい」と思っていたし、今でも、その思いは変わらない。それでも、毎回、自分以外の誰かの決断で、「そこを離れろ」と言われるのは、きつい。

 

3年後:日本に帰国して、NYを振り返ると 

あれから3年。日本帰国が決まった私は、「ニューヨークに残りたい」とパニック状態になり、12歳になった息子に、「ママ。どこに行っても、楽しさを見つけるのは自分だよ」とたしなめられた。私が3年前に彼に言った言葉、そのままだった。

では、私はニューヨークという「街」に惚れてしまったのかというと、そうではなかったと思う。帰国した今、それに気づいた。

ハートをギュッと握られるような切ない感覚は、街を離れることが寂しいからではなく、ニューヨークで出会った「人々」と別れるのが、悲しかっただけだったと思う。世界中から、ユニークで魅力的な人を集めるエネルギーがあるという意味では、ニューヨークという街は、確かに特別だったとはいえる。

そして日本に帰国した私は今、少し清々しい気持ちでいる。
いつの間にか、「潜在意識が私をニューヨークに連れて来た」と公言するほどになっていた私は、滞在を終えて、私の人生で経験すべきだったことを、1つクリアできたと感じているからだと思う。

「あの3年間で、出会う人には出会い、仲良くなるべき人とは仲良くなれた」という気持ちも強い。そして、「ニューヨークを離れても、残るべき人間関係は残る」ということも疑っていない。
実際、3年間日本を離れても、私と大切な人たちとの関係は、何も変わっていない。失ったものがあるとすれば、ニューヨークのせいではなく、私のせいだろう。

この3年間「あっという間だったね」とも言われるけれど、私にとっては「あっという間」というには、あまりにも濃厚で、格別な3年間だった。

なんといっても、「ニューヨーク」という響きに、1ミリも心を動かされなかった私が、今や「ニューヨーク」と聞くと、大切なものが詰まった宝箱に触れたときみたいに、胸がキュンと締め付けられるのだから。

 

 

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