夢のままであったら良いのに……


夢の中の夫は


いつも通りよく喋って


関西人らしくツッコミも入れて


アップテンポな口調でいてる


『え!ちゃんと喋れてるやん!』と私


『せやで!治ってたんやで!』と夫


あーー、良かったぁ と安堵して


ふと夢から醒める


現実を思い出す


気管切開している夫は


思うように声が出せない


口を大きくパクパクして


思いを表出するけど声にならない


闘病生活が始まって


夫は絶望の淵に立ち


あの時(倒れた時) 死んでおけばよかった と


そう文字盤で訴え


声にならない声を出し


大泣きしていた


聴こえない 喋れない 全身の感覚がほぼない


食べられない 飲めない 動けない


1人では生命維持さえ困難


私の誕生日には


大好きなタルトケーキを買って帰ってきてた


ケーキ屋さんをリサーチして


仕事の合間を縫って、車を飛ばして


毎回タルトケーキを


『はい、ちょっと早いけど』夫


って、くれてたね


夫の優しさを思い出すと


涙が出ます


そして、もう同じことはしてもらえないと


思うと


病気になったことが悔しくて、悲しくて


ただただ、倒れる前の生活に戻りたい