酒米といえば、王者は「山田錦」。三木市は質・量ともに日本一の生産地で、中でも「特A地区」とよばれる吉川町・口吉川町(及び加東市の一部地域)で生産された山田錦は、全国の有名銘柄酒造会社の間でも大人気です。また、兵庫県全体でも、山田錦を含めた様々な品種の酒米を広く育てています。

 さて、兵庫県は、実に10年ぶりに酒米の新品種を開発しました。その名も、「Hyogo Sake 85(ひょうごさけ エイティーファイブ)」。最初からアルファベット表記の名称で登録するというのはとても珍しいのですが、これも海外への輸出を考慮しているようです。この新品種は山田錦を改良して、台風シーズン前に収穫できるのが特徴で、寒冷地である県北部向けの極わせ(早稲)種です。なので、既存の山田錦とは、かなり住み分けができるようです。詳細は、神戸新聞の記事をご参照ください。

■【神戸新聞】酒米10年ぶりに新品種 兵庫県が「山田錦」改良

 現在、兵庫県は「兵庫県産山田錦」を売り出しており、そのブランド力はとても高く、日本酒の各種品評会で賞を狙うのであれば、兵庫県産山田錦を使う酒造会社はとても多いです。しかし、兵庫県自体はとても広い県土を有し、地域によって気候や風土、さらには土壌もかなり異なります。そのため、同じ兵庫県産山田錦といっても、品質や特徴に差がある、あるいはばらつきがあるという指摘もあります。そうした指摘に対応するため、というわけではありませんが、各地域の気候や風土に合った酒米を育てるべく、兵庫県もさまざまな品種の酒米を開発してきたようです。

 新聞記事の中でも言及されていますが、今回開発された「Hyogo Sake 85」のほかに、2008年に中・西播磨地域向けに開発した「兵庫錦」もあります。そして、従来の「山田錦」。このように酒米の品種をきちんと住み分けして育てるほうが、逆にブランド力や競争力を高めることができるかもしれません。

 現在、日本各地では「地産地消ブーム」が盛んです。日本酒の品評会で賞を狙うなら兵庫県産山田錦を使うものの、地元で消費するなら地元産の酒米を使う、という機運が高まっています。「兵庫県産山田錦を使っていない」ということを売りにする酒造会社もあるといわれるぐらいです。兵庫県産山田錦、兵庫県産酒米のブランド力や競争力、ブームをどう繋げていくのか、しっかりと戦略を立てていかなければならないと思います。

 神戸新聞の記事にもありますが、「Hyogo Sake 85」は商品化するまで18年かかっています。品種改良や新種開発には長い年月がかかりますが、そうした品種が他地域でコピーされることなく、農家に安定して種が供給され、健全な競争と経営ができる取り組みも大切です。これからも、しっかりと取り組んでまいります。

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