小学生のある日
友だちのお母さんに『南極物語』という映画に連れていってもらった。
友だちは犬が死ぬ度に、大泣きした。
「なんで、死んじゃうの?ねぇ、なんで?」
何度もお母さんに問いかけた。
お母さんは周囲の目を気にして
「もっと小さな声で」
とたしなめた。
けれど
彼女は映画が終わってからもずっと泣き続けていた。
私は映画をほとんど観ずに、泣いている彼女を奇異な目で見ていた。
心の中で
「なんで、これぐらいで泣くんだろう」
と不思議に思っていた。
またある時、彼女は学校を休んだ。
連絡帳を届けると、お母さんが出てきて言った。
「飼っていた鳥が死んじゃって、ずっと泣いているのよ」
ひどい話だが
その話を聞いたとたん、私は吹き出してしまった。
その頃の私は
「動物が死んで泣く」という感覚が全く分からなかった。