こんな記事を発見した。

世界遺産・大理古城、30元の維持費を徴収へ

 雲南省の世界遺産・大理古城では、今後場内観光をする観光客から一律30元の維持費を徴収することになった。徴収した維持費は古城の保護資金とされる。
 この維持費は観光客個人のほか、場内で商業活動をする人からも収入の1%を徴収することになる。
 実際の徴収は公示から3ヵ月後となる。

エクスプロア広州 〔2009年08月25日掲載〕


中国人が最も旅行に行きたいランキングで、必ずやベスト3に入るであろう雲南省。

メコン川が東南アジアに通じ、上にチベット、下にタイ、ラオス、ミャンマーなどの他国に囲まれた西南地方の僻地。

少数民族が多く、中国の漢民族文化とは違った情緒が味わえ、且つ春の城とも呼ばれ一年中花が咲き誇る美しく住みやすい環境を持つ。一方で、GDPは低く貧困省という顔も併せ持ち、麻薬やAIDS等の問題が深刻化している地方でもある。

産業は花とたばこが主体で、沿岸と異なり企業進出も少ない。
そのため、少数民族が多いという特色を生かした観光業が盛んになっている。

しかし、観光地間の競争は激しい。

大理は90年代後半に栄華を極め、2000年代以降近隣の麗江やシャングリラに観光客を奪われていった観光地である。交通が発達していなかった雲南省ではバスか鉄道が主体であった。唯一鉄道が繋がっていた大理は多くの観光客を集め、そしてディズニーランド化していった。一方、世界遺産登録を境に一躍有名になった麗江、小説でのイメージを生かしたシャングリラは空港を建設し、上海や北京の大都市から、飛行機でダイレクトに観光客を受け入れるようになった。すでに世俗化が始まっていた大理はここでもっと観光客を奪われることになる。

ライフサイクルと同じように観光地にも発達段階があり、大理はその衰退期に差し掛かっていた。
2004年に訪れた時、2002年に来た時のにぎやかさはなくなっていたが、ツアーや派手な観光客が麗江やシャングリラに向かうようになった影響で、ある意味街が落ち着きを取り戻しており、麗江などで混雑に疲弊したバックパッカーが骨休めに長期滞在していた。

ある程度の旅行者はいたが、個人旅行者(特にバックパッカー)が観光地に落とすお金というのは団体客が落としていくお金より少ない。おみやげも大して買わなければ、食事も質素である。

90年代の後半に一度めまぐるしく訪れる団体客の消費によって繁栄を味わっている大理が、その少しの消費で街が維持できるようにはもうなっていなかったのだろう。その結果が今度始まる上記の政策なのではないかと思う。

政策を冷静に考えると、30元の入場料は観光客の流動性を阻害するためよくないと思う。
落ち着いた街になった大理を気に入っていた長期滞在の個人旅行者をも排除してしまうだろうし、ツアー客にとっても入場に費用がかからない麗江との比較においても劣勢である。

恐らく、これでは2年後、3年後と入場料を上げていくことでしか街の運営を維持できないのではないかと思う。

観光地が生き残るためには、そこにしかないものが必要である。



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