大手鉄鋼会社で抗議デモ、社長が殴り殺される―吉林省
7月28日16時48分配信 Record China

24日、中国吉林省の大手鉄鋼会社、通鋼集団通化鋼鉄股フェン公司で組織改編に伴う人員整理などを恐れた従業員が集団で抗議デモを行い、経営権を引き継ぐことになっていた民間鉄鋼会社の社長が殴り殺される事件が起きた。

2009年7月24日、中国吉林省の大手鉄鋼会社、通鋼集団通化鋼鉄股フェン公司で組織改編に伴う人員整理などを恐れた従業員が集団で抗議デモを行い、同公司の経営権を引き継ぐことになっていた民間鉄鋼会社の社長が殴り殺される事件が起きた。27日付で新華網が伝えた。

同公司は吉林省最大の省属企業。同省政府新聞(報道)弁公室は27日、記者会見を行い、同省国有資産監督管理委員会(国資委)の王喜東(ワン・シードン)副主任が事件の経緯を説明した。それによると、同公司は経営危機を立て直すため、第2株主である民間の鉄鋼会社・建竜集団からの増資を受け、経営権も譲渡することになっていた。だが、リストラなどを恐れた従業員が強く反発。建竜集団から同公司に派遣されていた陳国軍(チェン・グオジュン)社長を集団で取り囲んで殴った後、負傷した同社長を人質に立てこもった。

その後、建竜側が増資話を白紙に戻すことを表明。それでも人質が解放されなかったため、当局が強行突入を敢行した。同社長はようやく助け出されたものの、同日夜11時(現地時間)に死亡した。(翻訳・編集/NN)


私の以前いた武漢には通称武鋼(Wugang)と言われる国有の鉄鋼会社があった。
その規模といったら、まさに一つの街で、ちょっとやそっとの民間企業ではかなわないほどの歴史と存在感を持ち、人々の信頼を集めていた。

ニュースを見れば、内需に沸く中国は多国籍企業のエマージングマーケットとしてすでに資本主義に蹂躙された感はあるけれど、おじいさんもおばあさんも、むすこも嫁も、子供もと、3世代が一つの企業で働き続ける国有企業は、今も中国のあちらこちらで息づいている。国有企業は、仕事も家も趣味も老後も保障してくれる。人々は、その保障母体である単位(danwei)に一生を置き、中国の街は、基本的にそのような単位に基づいて発展してきた。民間企業に比べて明らかに給料が低くても、人々は歴史と安定と絶対につぶれないという誇りと信頼のもとに、上も下も右も左も同僚だらけの街で暮らしている。

ニュースになっている通鋼も5万人の生活を支えている。
そこで起きたのが上の事件。

金融危機も合わさり、通鋼は生産しても赤字が出るような経営が続いていた。
そこに、株主であった民間企業の建竜集団に経営権を譲渡するという企業再編が行われようとしていた。

人員再編などの不安を抱えた人々、とりわけ通鋼を退職した高齢者たちが会社に集まり、再編への抗議を開始し、ついには何者かが建竜集団の社長を殺害する事件にまで発展してしまった。

同じ釜の飯を食う、社員は一つの家族として生きてきた人々には民間企業に経営権を握られることに対し大きな抵抗がある。一つの街の中で3世代も生きてきた人々には外の世界から来る者すべてが敵のように見えるのだと思う。

今日の鳳凰電視台での特集を見る限り、労働者のことを考えないで経営権を獲ろうとした建竜集団が悪いという話に寄っている。しかし、だから人を殺してもいいという話にはならない。なんだかその視点が抜けている。人が死んでいることへの重みがない。「愛国無罪」という言葉があるけれど、これもまさにそれに近い。大きな特権を受け、甘やかされ続けている国有企業の反省というものが見えないし、この事件を受けて建竜集団が株をすべて手放すという事態になっており、これでは経営者を殺せば思い通りにできるという誤解を招きかねない。

国有企業に再編が必要なのは明らかで、多かれ少なかれの国、日本も通ってきた道だと思う。
しかし、この事件は、改革を試みなければいけない国有企業の一歩を大きく萎縮させたのは確かだと思う。

中国は時にむちゃくちゃとも言える大鉈を振って政策を動かし、恐ろしい勢いで社会が呼応していく。これがこの国の原動力であるけれど、やっぱり実際は相当数の人がその激変においていかれている。

改革を極端に恐れた人々、資本主義についていけなかった人、変えることに目が行き救われなかった人が絶望的な手段に頼る事件が増えている。