土曜日といってももう日付が変わるような時間、ついに広州に帰ってきました。
やっぱり第一声は、「なんだこの湿気!」だったけれど、チベットで紫外線と乾燥に痛めつけられてきた私の肌は大喜びでした。

書きたいことがいろいろありすぎて、なにから始めようかと悩みますが、まずは最初の一日目のそのまた前半の出来事から。


出発数日前から、飛ぶか飛ぶかと気を揉んだ飛行機も、22日の前日に問い合わせてみると、「え、飛びますよ」とのこと。私の同僚は余程運が悪かったのかなんなのか。とりあえず大丈夫だろうと22日の夜は眠りに着き、23日の朝、少し早すぎるかなと思う時間に家を出発。

ところが。。。

空港は大混雑。
どうやら明け方に降ったスコールが影響し(こっちのスコールは雨に撃たれて怪我するくらいザーと降ってすぐに止む)、空のダイヤが乱れている模様。挙句、ラサ行きがなんだか混んでる香港行きの搭乗手続きカウンターと一緒になっており(国際線のカウンターは荷物が多い人が多いので時間がかかる)、列がなかなか進まない。しかも離陸時間がなぜが15分早くなってるし・・・

というので、広州の湿気、混雑、焦りで汗だらだらになりながら、搭乗手続きをする。

「間に合いますよね?」(还赶得上吧)
とお兄さんに聞くと、

「急いだほうがいいよ」(小姐,抓紧时间)
と答えが帰ってくる。

わかる人にしかわからないかも知れないけど、この回答で感動。
あーまた南方の人が好きと思いながら、セキュリティーに食いこみ、搭乗口に駆け込む(私のこの間に合わせ方はすでに中国人の域に達していると、飛行機の席に着いたとき我ながら思う)



ちょっと話はそれてしまうかもしれないけれど、私はこの広州(華南)がとても好き。
というのも、人が穏やかでのんびりしている。

東北や他の地域の激しい気性や強い主張があまりない。
昔よく見た喧嘩もあまり見ない。

一年中温暖で、そんなに気候の変化がなく、厳しい寒さも吹き荒れる黄砂もないこと、
走っても汗をかくだけだから急がないということも影響しているとは思うけれど、
こっちの人はのんびり、悪く言えばだらだらしている。
広東語がまさにそんな言語でもある。

さっきの会話でも、場所が場所なら、無視か「知らないよ」ぐらいの回答が帰ってきそうなところでも、南方の人からは余裕のある言葉が返ってくることが多い。回答の量が多いというか、なんというか。

ある日、トイレを探していた時も、普通なら「うちにはない」で終わるところ、「ちょっと先に行くと病院があってそこにあるよ」と教えてくれる。(本当にこんな例で申し訳ないけれど)


それからあまり政治的な話もしない、それについて強い主張もしない。
中央から離れた商売の町ということもあり、そしてアンチ中央的なところもちょっと見え隠れする。



日本人であることで、今までたくさんの中国人から質問を浴びせられてきた。


昔はそれに対して説明責任を!とかなんとか分かり合えないか!と思い、一生懸命、いろいろ話を変えて私も答えてきたけれど、結果、あまりいい感じに終わらないことが多い。というか結果がでない。今まで受けてきた教育を変えるだけの討論をお互いできることというのは、かなり話せるようになった今でもほとんどない。特に日本の侵略の記憶が生々しい東北の人ならなおさら。



「もっとがんばれ」「話し合えばわかる」
「いつかわかりあえる日がくる」

という人もいるかもしれないけれど、中国人と歴史を話すことがいかに難しいかをわかってくれる中国滞在経験者は多いと思う。日本でならまだしも、1対1でならまだしも、中国で、しかも中国人がたくさんいる中で、分かり合うのは難しい。それこそ、この話題について日本人と分かり合うことは中国人にとって最も大切な面子がそこなわれる可能性がある。




いろいろな意味で、南方とは政治より商売、昔より今を好む土地柄である。

四川の地震があった日に何事もなく聖火リレーをやってしまった福建省の土地柄もなんとなくわかる。南方とはそういう土地柄である(最近の広東省GW1週間騒動にしても)。



歴史は乗り越えられないといってしまうとよくないけれど、そこから出発しようと思ってもなかなかお互い立っている基盤(教育、知識)が違うので、わかり合えない。

列車で出会った知らない人から、「日本が昔何したか知ってるか」っていきなり聞かれてわかりあうのはちょっと難しい。・・・・・・・昔、何度もあったけど。


今現在の協力関係(商売でも友情でもいいけれど)を築くこと、そこから始めるほうが過去から始めるよりいいと思う。(今の日中の戦略的互恵関係はそこにあるとも思うけど)

過去を話し合うより、冗談を言って笑顔を交わすほうが何倍も意味があると思う。

とにもかくにも優しく穏やかで適当でだらだらした広州が私は大好きである。
うっとおしい湿気もチベットから帰ってきた私には優しいミストのように感じている。


なんだかチベット旅行から離れて、どんどん違う方向に行ってしまったけれど、話を戻すと、とりあえず飛行機に乗り遅れそうになったということで。


チベット旅行記第一回、完。


せめて、写真だけはチベットを。


◆ 30万の中国 ◆



◆ 30万の中国 ◆



きっと、このチベット旅行の話も、南方人に感化されてしまった私らしく、だらだらと続くことになると思いますが、何卒お付き合いください。