みなさん、こんにちは!
本日の「きっかわみきの物語」部分公開は、
「続・金色(きん)の耳」からです。
生き物にはどうして悲しみや苦しみがあるのだろうと
考え始めた<花>は、この日、けがをした大鷲に
遭遇します。
さて、そこでは何が起こり、そして<花>の疑問、
「生き物にはどうして悲しみや苦しみがあるの?」には、
どういう答えが返ってくるのでしょう。
それでは・・・・
季節は巡り、夏の太陽がじりじりと照りつけるその日、<花>は深い緑の木々の奥にこれまでに無い気配を感じ、何かのかすかな声を聴きました。
か細い声のする方をたどると、いつも凛々(りり)しい姿を見せていた大鷹(おおたか)が、羽に怪我(けが)を負ってうずくまりながら、かすれて弱った声で嘆いていました。
「どうしてこんなことになったんだ! 僕はこれまで病気一つ、怪我一つしたことがなかった・・・。それが、着地し損ねて怪我をするなんて・・・。この僕が飛べないだなんて・・・。一体、一体・・・」
<花>はこの大鷹の嘆き悲しみの声を聞くと、何としても大鷹を元気付けたいと思い、とっさにこう言いました。
「大鷹さん、ひどい怪我をしたのね。全く飛べないんだ。でも・・・、今あなたは痛くて苦しいのでしょうけれど、でも・・・、それって、きっと悪いことばかりではないわ・・・」
<花>の頭の中では、これまで様々な生き物から聞いた言葉が思い出されて、渦巻き出していたのです。
しかし、大鷹にはその<花>の言葉の意味するところは分かるはずもなく、一も二も無く言いました。
「えっ? 悪いことばかりではない?冗談じゃない!花のお嬢さん。こんな状況、悪い一方に決まっているさ」
(いまの大鷹さんにとっては・・・、そうよね。そう思うのは、当然・・・)
<花>はそれ以上に大鷹にかける言葉を失い、がっくりと首をうなだれたのでした。
ところで、<花>の遠く頭上では、夏空の雲間から太陽が顔を出し、<花>と大鷹のこのやりとりを厳かに聞いておりました。
<花>の耳は、かすかに何かを聴きとりました。雲と雲の間から降り注がれるまぶしい日の光の中から、確かに、確かに太陽の声が聴こえてきたのです。その声は、ぐんぐん大きくなってきました。
「起こったことを生き物が良いだの悪いだの言っているのは、それは生き物がそれに自分好みの意味付けをしているだけなのです。起こった出来事がどういうことなのか、限られた時間を生きる生き物には、所詮(しょせん)はその全容はつかめない。長い長い途方も無く長い時間を見渡さなければ、その全貌(ぜんぼう)は分からない・・・。それは結局のところ、神仏にしか分からないことなのです。それから・・・、もう一つ申し上げておきましょう。すべてのことは、光と陰からできている。そう、光と陰・・・。しかし、勘違いしてはいけません。何が光で何が陰とは一概には言えず、またどちらがいいとか悪いとか言うものでもないのです。光が生じる時には同時に陰が生じ、光が滅する時には同時に陰も滅する。光だけ、陰だけ、ということは無い。いずれにしても・・・、光と陰、この二つがあるお陰で、この世のいのちは輝きを得ているのです」
この日、<花>にはこの太陽の声が、天空全体からのささやきにも感じられたのでした。
さて、いかがでしょうか? 部分公開の後半で、太陽が<花>に言った言葉の意味はお分かりになったでしょうか?
「起こったことを生き物が良いだの悪いだの言っているのは、それは生き物がそれに自分好みの意味付けをしているだけなのです」
「すべてのことは、光と陰からできている」
「いずれにしても・・・、光と陰、この二つがあるお陰で、この世のいのちは輝きを得ている・・・」
今日は皆様どうぞ、これらの言葉を何度か口づさんでみて下さい。
そして気が向かれたら、それらの意味するところを考え、しばし思索にふけってみて下さい。
この「続・金色(きん)の耳」は、続編からでも単独でお読み頂けるようになっています。
そしてお話では、生き物の悲しみ苦しみについて、様々な角度から語っていますので、今後ともご愛読の程、お願いしますね☆
それでは今日も素敵な一日をお過ごし下さい!
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