晴れていても、雨が降っても、
ウグイスの鳴く声がした。
「ウグイスって、今の時期に鳴くんだっけ?」と思いながら 雨の常滑を一人歩いている。
この地に赴くのは2度目で、ちょうど8ヶ月前の残暑厳しい八月の終わり。
…あの時と同じようにロッカーに荷物を預け
あの時と同じ道を歩いた。
雨が少し激しくなってきて、ふと奥まった民家で男性が不思議な行動をしている事に気付いた。
大量の焼き物に、柄杓で雨水を掛けているのだ。
晴れていては見られない光景だ。
どうしても気になったので話しかけてみる。
「水が漏れないか確認云々。繰り返し水に漬ける事によって表情が云々。」
折角だから、と アトリエに案内してもらえる事に。
昔の、小学校の美術室と、技術室を水分多めに混ぜた様な懐かしい匂い。一瞬自分が何処にいるのか、生きているのか分からなくなった。
聞けばこの方、常滑の四代目窯元に生まれ、数々の展覧会や賞を受賞し、アメリカのボストン美術館に作品を収蔵しているスゴイお方だった。(と知ったのは終盤だが)
購入したいです。と申し立てると 大量の焼き立ての中から好きなのを選ばせてくれ(雨水に漬けてないけどまあいいや)目の前で仕上げをしてくれた。
しかも「今桐箱が無いから展覧会の半分の値段で良いよ」と。恐縮。
◆
窯元を後にした私はまた
あの時と同じように歩き
あの時と同じようにカフェで休んだ
(そしてあの時と同じ席に案内された)
それから
あの時と同じように駅でお酒を立ち飲みして、常滑を去った。
でももうあの時とは違う。
何もかもが違う。
あの時には戻れないけど、またここから始めようと思う。
またこの地をゆっくり歩きたいと思う。











