映画「層間騒音」、韓国映画です。
第57回シッチェス・カタロニア映画祭(好き。ファンタジー系やホラー系でここ出身のは面白いですよね)で
「仄暗い水の底から」(見てない)の再来と絶賛された、とか、韓国で公開されるや口コミが広がって、韓国映画の中で
3集連続1位だったとか(以上、チラシより)、大絶賛大人気作映画のようです。
このポスター、今見るとこの映画を端的に表していて、一番上が主人公で終始いろんな恐怖に怯え、不審におののきます。
2段目がこの映画のオカルト風味、3段目;サイコパス隣人、4段目;このマンション全体恐ろしい、という表れ。
予告編を何度か観ていましたが、そのたびによくわからなくて(何を怖がれば良いのかが)、うーん??と思ってたのですが、
気にはなっていたので観てみました。
素直な感想第一弾としては、「盛り込みすぎなん違う?」でした。
マンションの騒音問題で、精神的に追い詰められるほど悩んでいる妹。
姉は補聴器をつけなければ耳が聞こえない障害がある。
この姉妹は父母を事故で亡くし、その後遺症で姉は耳が不自由になり、妹は足を引きずっているようです。
で、その妹が突然失踪したところから姉とストーリーが動き出します。
この失踪がオカルト風味の味付けなんですね、サスペンスじゃなくて。
失踪後の妹の部屋に入った姉が、散らかった床から衣服をのけると黒い大きなしみ。
きゃっ!と驚いてまじまじとそのしみを見つめる姉。
オカルト映画で人が消える時に残る怪しいしみチックなのですが、後にわかる失踪の顛末にこのしみは関係なかった。
一体なんだったん?カビが生えるほど長期不在だったわけでもなかったし。
そうこうしてるうちにインターホンが鳴る(エリーゼのために)。
ドアガードかけたドアの隙間越しに確かめると、真下の部屋の男性が騒音の苦情(お姉さんは静かに暮らしてます)。
あ、そうそうお姉さんが久しぶりにこのマンションに帰って来た時には、ドアに苦情の張り紙がしてあったんですが、
それもこの真下の部屋男の仕業らしい。
この男、ここから何度も来るのですが、そのたびに危険度がエスカレート、しかも最初の「ちょっと変な人」から
完全サイコパス判明までが速いし、こいつがこの映画の犯人(っておかしな言い方だけど)でしょ!ってなるくらいの映し方。
包丁持参で苦情言いに来たんですよ、3度目くらいに。しかもそれでドアをガンガン突っつくし。怖かったわ。
さらにサイコパスなのは自室ドアのテンキーで暗証番号入れる時にその包丁でやるんです。
もう完全に正気を失ってますよね。怪しいですよね。
なのにこの男、そのあとあっさり階段から落ちてお亡くなりになりました。
何か現実のものではないものを追っかけて、そうなっちゃうんです。
あっ。これはネタバレに該当しますか?
映画のラストとは関係ないんですが。
もし顛末について金輪際ビタ一文知りたくないと言う方は、この先もこのような感じで書くと思いますので、申し訳ありません。
そうそう、妹捜索の過程で、姉妹の入居していた部屋は実は事故物件(過去に首吊り)だったことが判明します。
そのせいでお姉さんは、有力ご近所さんたちから
「やっぱりあの部屋だからおかしくなっちゃうのよ」なんて大きな声の陰口叩かれたりします。
どうも入居の時に格安で入ったわけでもなさそうで、しかも被害者(霊の)なのに悪しざまに言われて可哀想です。
オカルト要素がいっぱい出てきて、そうか妹もそんな超常現象にやられたか?と思い始めるのと並行して、ご近所問題も深く
描かれ始めます。
ボスのおばさんがいて、その取り巻きがいて、そのグループや傘下に入ってないと冷たくあしらわれます。
日本でも(って体験したことないけど)韓国でも同じですね。村社会の構図ですね。怖いわ。
で、はぐれ狼みたいなお姉さんが仲良くなるのが8階の温和そうな(だけど少し寂しげな影のある)女性。
彼女のお部屋を訪ねて、マンション事故話の数々を教えてもらいます。
これがスプラッタホラー映画(いや、映画なんですけど)並に凄惨な恐怖案件。
警察や除霊師が介入してないのが不思議なくらい。
この8階の女性には幼い娘がいるようで、その子がパタパタ走り回る音がうるさいと神経質な隣人から苦情申し立てられて
小さくなってる、とその女性は語ったり匂わせたりします。
お姉さんも身に覚えのない騒音で階下の男から脅かされてたので共感します。
が、このへんが後になって伏線として回収されまして、なるほどー、とこちらもこれは納得がいきました。
納得行かなかったのは、妹の彼氏の処遇。
お姉さんと一緒に妹探しに奔走するのですが、その一環でマンションの地下室に入った時にゾンビの被害に遭ってしまった。
ゾンビ?
マンションで騒音問題があってご近所迷惑からサイコパスが発生して異常行動した、のはわかる。
うん。ありげです。
事故物件で部屋についてた霊が入居者を脅かす。
うん、これも聞きますよね。
これらは現実界案件なのにそこへ来て、首がぐるっと回るようなゾンビが出てくるってびっくりした。
まあ、いいや。これも本筋から導かれるラストに全く関係なかった(と思います)から。
複雑な事情のある姉妹(事故で両親を亡くし、姉妹も傷を負い、
しかも妹の悪戯でその事故が起こったらしくて姉妹関係がお互い口には出さないが微妙らしい)、
マンション村社会、影のある隣人、サイコパス男、事故物件、霊、スプラッタ、ホラー、ゾンビ、
と盛り沢山。
どこが一番ポイントなんだか思考が忙しい。
しかも、事件のキモはそこじゃなかったー!
のでした。
そして、間違いなくその「キモ」が一番怖かった。
それはホラーも霊も全く関係なくて、普通の人間にできちゃうことでした(から余計に)。
喪失感が悔いを生んで人を苛ます。
それによって自分を責めたり、人を攻めたり(逆恨み)。
人にできることで恐怖は起こせるし、人の思いで人は狂う。
そんな気がしました。
いろんな案件てんこ盛りだったけど、一筋の真実を導き出してもらったような気がしました。
うん、観てよかった。
ありがとう、映画🎬
