息子は差額ベッド代0円の大部屋に入院することになったのだけれど、私と夫はその部屋に案内されてびっくりした。
そこはただのだだっ広いフロアに20床以上のベッドがただ並べられ、一応、カーテンで仕切られてはいたが、プライベートもへったくれもない、とんでもない部屋だった。
いや、それはいいんだけど、驚いたのは重症の人も元気そうな人も一緒になっていて、テレビの音もイヤホンを使わずアチコチから駄々漏れ状態。
というか、カーテンを開けっ放し、もしくは半分しか閉めてない人がほとんどで、歩くのにどこを見て歩けばいいのかさえわからない目のやり場に困る。
半分、死んだように眠ってるようなお年寄りや、短パンにビーサンでペタペタ歩いてる若者、患者同士で大きな声でおしゃべりしてる人たち。
こんなところに身動きひとつ出来ない息子を置いて帰らなきゃいけないのか!
慌てて息子に「個室に替えてもらおうか?」と言ったのだけれど、「いいよ!大丈夫!」と我が家の家計を慮っての返事![]()
この頃には息子の体は指一本動かなくなっていて、ナースコールも押せず、息を吹きかけてコールするという装置をセットしてもらったのだけれど、それをちゃんとセットできる看護師さんがいなくて、皆、あーでもない、こーでもないと・・・しびれを切らした息子がこれをこーやって、あれをあーやってと指示を出して漸くセッティング出来るという不安いっぱいの入院初日。
不安いっぱいだったけれど、面会時間が終わる頃にはこんな状態の息子を置いて帰らなければならず、後ろ髪引かれる思いで病院を後にした私たちは、それでも入院したんだからとりあえず一安心だね、と、コンビに弁当を買って帰った。
家に着き、私たちの帰りを首を長くして待っていた義父と3人でコンビニ弁当を食べながら、息子の状況を義父に報告し、今日、入院できて良かったとか、後はリハビリ次第だね、とか、とにかく息子を病院に任せたということで、息子の心配より、これから長くなるであろう息子の入院生活と、それに伴う自分たちの生活やら何やらの話をしていた。
そして、更なる安心の材料が、ちょうど寝ようとした時にかかって来た医師からの、「ギランバレー症候群という結論がでましたので、これからすぐに治療に取り掛かります。」という治療の同意を求める電話だった。
「どうぞ!どうぞ、よろしくお願いいたします。」と丁寧に電話を切った後、
あー、よかった!
治療が始まれば明日には腕の一本も動くようになるかもしれない!
あー、よかった!
そうでしょー、やっぱりギランバレーだったでしょー!?
そうよ!ギランバレーしかないわよ!
まったく、もっと早く結論を出して治療してくれてれば良かったのに!
でも、今日、発症して今日、治療だから十分早いわね。
とにかく、良かった良かった!
あー、よかった!
私はそんな独り言を言いながら布団に潜り込んだ。
こうして、長い長い一日が終わった。