背中から落ちている。

遠い知り合いのライブを見に来ていた筈なのに
わたしはゆっくりと落下していた。
思ったよりも落下のスピードか緩やかで
まるで宙に浮きながら堕ちているような
柔らかい感覚だった。

落下しながら体制を変えると螺旋階段と手すりに触れることができた。
ただしその階段には埃が付着していて、あまりきれいではなかったけれど
触れる事で何か変化することを期待したのかもしれない。

右端の方で、本当はもう居ないけれど居るようなことにしている幼い男女が人形になっていることがわかった。
この世界は、生きているものの世界では無いみたい。
スチームパンクの世界は素敵だと言うけれど、本当は素敵だけでは無いのかもしれない。
そこに命がないのに動いているカラクリを今目の前で見ている。
わたしは足を手すりに引っ掛けて、左目に人形たちの悲しくて汚くて美しい姿を確認しながら、
このまま落ちるのかなと思った。
落下の速度はどうも緩くなり、わたしは落下しているのだろうに、景色が上昇しているようにも思えた。
背中には蜘蛛が作った糸でできた布があり、そ!が背中を支えてくれているけれど、なぜかその布は温かみがあって不思議ではあったけれど、
やはり、落下は止まらなかったのでした。

わたしはここに落ちる前にたいそう笑いました。
狂ったように笑っていて、笑う事を止められず
いよいよ壊れたのかと思いました。
そして緊急地震速報で目が覚めました。

そして憧れのあの人がバンドを脱退してしまう事を知りました。