アカシア


砂に描いた夜は   爪先ひとつの隙間
縺れた銀の月  深く胸に埋めた

窓から見える空は  揺れた波に押されて
零れ落ちるものに  戸惑う静かな午後

最果ての実を砕いて  独りでは眠れずに
怯えるように 身を潜めたまま
『ここにいる』と ずっと  叫び続けた


その手を伸ばして  長い針が心臓を貫くまで
その手を伸ばして  抗えない力に奪われるまで



吐息が変わる夜は  嘘の蝋燭(ことば)を並べて
最後をかばうように  炎がそっと消えた


柔らかな黒い髪を なぞる度壊れてく
裏切りそうな   舌を噛んだまま
『僕を見てよ』  細い首に手を掛けて…


その手を離して  崩れる時間に飲み込まれるから
その手を離して 何も知らないように眠るだけでいい



「夢を見てた  あの日の空が見える
   確かに居た   君も覚えてる
   ちゃんと泣いて   笑っていられた僕は
   きっと強く   護られていた…」



この手を離して   崩れ逝くここから逃げ切って
この手を離して  振り返らずに歩いてくれたら
この手を離して  崩れる逝く僕からにげ切って


この手を離して   僕が  僕さえ手放してしまう前に…




アカシア/2005.11/word by ミケ(歌詞つけたもの)
人様のメロに初めて歌詞をつけたのだけとわりと好評だったので残しておく。