「よぉ」
「どぉも」
気の利かない返事。
アタシは緊張しすぎてわけがわからなかった。
どうやって中に入ったのか覚えていないほど、緊張していたままで、学食についた。
片本は、時計を見た。
あまりに大げさな袖の上げかたに、思わずアタシは笑った。
約束してたうどんをおごってもらって席に着いた。
しばらく無言で食べていた。
こんなにうどんが食べにくいと思ったのは初めてだった。
すするのがなんだか恥ずかしくて。
顔も上げることができなかった。
食べ終わって少しおしゃべり。
片本も緊張していたのがはじめてわかった。
何度も何度も。上着のボタンをあけては閉めていたから。
不意に、天井から片本を呼ぶ声があった。
柱の影から人が見えた。
「お前なにやってんだよ」
「しー。今鬼ごっこしてんだよ」
「やべ!みつかった!」
その人は、走ってどこかへいってしまった。
それがきっかけで、校舎を案内してもらうことになった。
いつも片本が使う教室や、講堂を案内してもらった。
そして、一番大きな講堂。
扉を開けるとそこは真っ暗で。
「いいから。入って」
片本の言葉に釣られて中に入る。
大きな講堂に徐々に光がついていく。
アタシのためだけに誰もいない講堂に明かりをつけて見せてくれたことが嬉しすぎて。
言葉がでなかった。
でも、これが案内の最後。
帰らなくてはいけなかった。
もっと一緒にいたいと、心から思った。
すると、アタシの気持ちをわかっていたかのように。
片本が微笑んで
「夜景きれいなところあるけど、いく?」
誘ってくれた。