SNSなどを見ているとベーシックインカムを望む声は根強い、では実際にベーシックインカムを実施するとGDPにどのような影響を与えるか見て行きましょう!

 

SNSを見ていると、「国民一人年間100万円支給してもそれによるインフレ率は1%程度で何ら問題はない、又財源は、日本は自国通貨で国債を発行できるのだから国債発行で補えば何の問題もない。」というようなものです。積極財政派、「現代貨幣理論(MMT)」信奉者に多いようです。

確かに、自国通貨を発行できる政府は、理論的に財政上の制限はないといえるでしょう。当然これは税を財源としなくで、できます。問題はそれが、国民にとっていいことかどうかです。

 

まず、GDPの式は以下のとおりです。

Y(GDP)=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)+NX(輸出-輸入)

 注)政府支出=自治体が行う財・サービスへの支出(社会保障の給付など移転支出は除く)

 

ベーシックインカムは、移転的支出である給付ですので、そのままではGPDにならず国民が消費してGDPに寄与します。(貯蓄した分は経済成長に繋がらない)

 

では、どの程度経済成長に寄与するかですが、国民一人当たり100万円/年×1.2億人=120兆円/年を給付し、それを全額消費すると120兆円消費が増えます。すべて国内の材料、機械、労働力でこれを賄えば、GDPは120兆円増加します。

 

経済成長を生み出す要因は1)労働力、2)資本、3)全要素生産性(TFP)の3つです。

注「全生産量の伸びから労働投入及び資本投入の寄与分を除いた残差」として定義され、具体的には、技術革新や資源配分の変化のほか、労働又は資本に関する質的な変化(教育訓練による労働者の能力の向上、最先端のIT技術を含む設備投資など)等が含まれる。

 

現在のGPDは550兆円ですので、120兆円は22%増ですが、労働人口が減る中それは不可能な数字と言ってもいいでしょう。コロナ前で先進諸国の経済成長率2.2%、新興国4.5%程度ですので、仮に新興国並みに成長したとして550兆円×4.5%≒25兆円 120兆円-25兆円(国内)=95兆円(輸入)

しかも、25兆円が国内生産の限界としても、国産か、輸入品かを選択するのは国民ですし、限界まで生産を上げれば労働環境を圧迫しまた、輸出に振り分けていた資本や労働力を国内に振り替える動きも出て、貿易赤字は相当なものになるはずです。

MMTの理論で言えばインフレ率や貿易が黒字という前提があるはずです。120兆円ばらまいても1%程度のインフレにしかならないシミュレーションがあるとすれば、多くが輸入に依存するから他なりません。世界に比したら日本の供給力は5%程度しかならないので、その程度の需要は大したインフレにならずにキャッチアップしてしまうからです。

エネルギー、資源、食料の多くを輸入に頼らなければいけない日本にとって、多額の貿易赤字が意味するところはお分かりだと思います。

 

身の丈に合った、景気刺激と、経済成長を生み出す要因である1)労働力、2)資本、3)全要素生産性(TFP)を増加させる積極財政派やってほしいと思います。

 

発行者:彩河輪真成(経済モデル研究所所長)

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