公債の中立命題と消費税増税について説明したいと思います。
安倍内閣にて2014年12月14日の選挙で消費税増税を延長するか?を国民に問うたことがありました。
その時に法政大学の小黒教授(元財務官僚)が2014年11月28日に投稿した記事が、安倍内閣の選挙
姿勢や、増税をすべきでないと論調を張った髙橋洋一氏へ対する批判をリカードの中立命題を絡めて展開
しています。
「公債の中立命題」と「代表なくして課税なし」~世代間格差が問題の本質(小黒一正) - 個人 - Yahoo!ニュース
ー抜粋ー
高橋洋一氏
実は財務省官僚は、「リカードの中立命題」といわれる考え方を都合良く使うのだ。例えば、財務省が国債発行で景気刺激を求められる場合、国債発行は将来の増税につながり消費を減少させるはずで、景気刺激効果はなくなるから、景気刺激は意味がないという具合に使うのだ。
これに対する小黒氏の反論
もしこの内容が、「政府支出の拡大を公債発行で賄って景気刺激を行う」ことを意味するなら、公債の中立命題の説明としては間違いである。
また、公債の中立命題が成立しないケースとしては、数年前の連載コラムでも説明したように、「世代交代」が重要である。将来の増税までの期間に、世代の入れ替わりがあると、そのツケは将来世代に押し付けられる可能性が高いからだ。
この命題が成立するには、いくつかの前提条件が必要である。例えば、1)政府支出の経路が一定で、2)流動性制約がなく、3)家計が将来の増税を認識している、等の条件である。
このうち、1)の「政府支出の経路が一定」という条件は重要で、上記太線の「租税か公債発行かという選択は等価」の「公債発行」は「政府支出の拡大」でなく、実質的には「減税」を意味する。なぜなら、公債の中立命題は、「政府支出の経路が変化する場合について述べている訳ではない」からである。
ー抜粋終わりー
まず、髙橋氏「が財務省官僚は、「リカードの中立命題」を都合良く。例えば、財務省が国債発行で景気刺激を求められる場合、国債発行は将来の増税につながり消費を減少させ景気刺激効果はない」と使うとしているの、その財務官僚の例にかみついているのは筋違い。
またこの命題は財政出の経路が一定(つまり予算額や予算配分が同じ)の条件があるので、髙橋氏の言う政府支出の拡大、では、命題が当てはまらない。といっているが、髙橋氏は財務官僚の間違った解釈について言っているので、それを批判しても仕方がない。また、政府支出増の景気拡大については結局否定していないこととなってしまい何が言いたいのはわからない。
ー小黒氏抜粋ー
なお、安倍首相は2014年11月18日夜の会見で、アメリカ独立戦争の象徴となったスローガン「代表なくして課税なし」を引き合いに、消費増税の一年半延期の是非を国民に問うために衆議院を解散し総選挙を行う宣言をし、12月14日に投開票が行われる予定だ。
マスコミの報道では、「代表なくして課税なし」という意味は、「税制は国民生活に密接に関わっているもので、国民生活に大きな影響を与える税制において、重大な決断をした以上、国民の声を聞く必要がある」旨のイメージで広がっているが、これは間違いだ。
なぜなら、イギリスの植民地であったアメリカは、イギリス議会に代表を送ることはできず、一方的に税金だけが課税されていたためで、本来の意味は「増税するならばイギリス議会に植民地の代表者を参加させるべき」が正しいからだ。
そして、この文脈でいうなら、いま日本で代表者を議会に送り込むことができずに過重な負担を押し付けられているのは、選挙権のない将来世代(20歳未満も含む)である。
よって、政府債務が累増するいま、選挙権をもつ現存世代と選挙権をもたい将来世代(20歳未満も含む)との関係では、「代表なくして課税なし」というスローガンは、「増税先送りで政府債務を拡大し、将来に負担増を先送りするならば、将来の納税者の代表を国会に出せ!」が正しい解釈になる。
ー小黒氏抜粋終わりー
これも引用の間違いの揚げ足取りで、言いたいのは次世代につけが回るということであるようだ!財務省が言っているのはプライマリーバランスので過去の借金を返済してとはいいていないので、将来につけが回ることはないし、統合政府バランスシートで見れば財政の健全化は達成されている。命題が成立しないケースとして世代交代があるとしているが、バローの中立命題は世代交代があっても成立するとしている。本音はすぐに消費税増税したいということを訴えたいのだろうが、結局言いたいことが分からないグダグダな説明になっている。
リカードの中立命題
公債発行と公債償還が同一の世代に限定されているとき、ある一定の政府支出を公債発行と課税調達で賄うのでは、まったく同じ効果をもつという命題。課税調達のときと現在価値でみて同じ税金を支払うのであれば、公債発行と課税調達に実質的な差はない。この議論は「リカードの中立命題」とよばれている。人びとが生涯にわたる予算制約式に基づいて最適化行動をするかぎり、どの時点で課税されても税負担の現在価値は同じであって、生涯にわたる予算制約も同じとなる。課税と公債とではなんら相違はない。公債発行、あるいは財政赤字のマクロ的な効果がないという公債の中立命題が成立する。
バローの中立命題
Barro's debt neutrality 公債の償還するのを先送りし、借り換え債をどんどん発行していけば、現在の世代が死んでから現在の公債が償還される。世代の枠を考慮すると、リカードの中立命題は成立しない。この場合にも課税と公債の無差別を主張するのが、遺産による世代間での自発的な再配分効果を考慮する「バローの中立命題」である。バローは、親の世代が利他的な遺産動機をもつことで、子の効用=経済状態にも関心をもつことを指摘し、その結果、子の子である孫の世代、さらに孫の子であるひ孫の世代の効用にも関心をもつことを示した。これは、結局無限の先の世代のことまで間接的に関心をもつことを意味するから、いくら公債の償還が先送りされても、人びとは自らの生涯の間に償還があるときと同じように行動する。公債発行と償還のための課税が同一の世代の枠を超えても、公債の中立命題が成立する。
非常に制約が多い試験管の中の命題である。
予算内容や規模を変えず人々が理性的に行動するのが前提であるのと、不景気時の増税の場合そのままでは、GDPが減少し予算規模は縮小してしまう。
つまりスパイラル効果には言及していない。
財政支出は本来、何が問題かを把握し機動的に行う側面があり、予算の内容や規模が一定であれば何も考える必要はなくなるが、現実的にそんなことはありえない。