ある日の朝のこと。

私はとても深い悲しみの中、海岸沿いの砂浜を泣きながら歩いていました。



「ふぅ…。」



ようやく落ち着いてきた私が砂浜に座り込んだ時…。



「痛っ!」



お尻に何か硬いものが当たる感触があったのです。

ふと、お尻を上げて覗き込んでみると、何やら黒いものが少しだけ見えていました。



「なんだろう…?」



気になったので、手で砂を掘り返してみると…。

出てきたのは、小さくて黒い懐中電灯でした。



「なんでこんな所に懐中電灯が埋まっているんだろう?」



不思議に思いながらスイッチを入れるとライトが点きました。



「まだ使えるのに、もったいないなぁ…。」



そう思った瞬間、どこからか声が聴こえてきました。



「拾ってくれてありがとう!」


「え!?」


周りを見渡したものの、近くには誰もいません。



「僕だよ!君が持っている懐中電灯だよ!」


「え!?これ!?」


「そうだよ!僕が話しかけてるんだよ!」


「え!気持ち悪いっ!」



驚いた私は、持っていた懐中電灯を放り投げてしまいました。



「痛いっ!何するんだよ~!」


「冗談でしょう?」


「冗談じゃないのはこっちだよ!下が砂浜じゃなかったら壊れてたところだよ!」


「これ、電話なの?」


「電話じゃないよ!見ればわかるでしょ!」


「誰かのイタズラ?」


「イタズラじゃないってば!本当に僕が話しているの!」



誰かが無線機か何かを仕込んで、どこかから見ているのではないか…?

そう思いながら周囲を見渡したものの、そんな気配はありません。



「疑り深いなぁ…。いつも最初が大変なんだよなぁ。」


「最初って…?」


「ううん、気にしないで!僕のことを話してもいいかな?」


「別にいいけど…。あなたはロボットなの?」


「ロボットじゃないよ!僕は魔法のライト!」


「魔法のライト?」


「そう!人間の世界には魔法のランプっていう物語があるでしょう?知ってる?」


「うん、それは知っているけど…。」


「それなら話は早いね!
僕はライトを点けてくれた人の願いを魔法で叶えることが出来るんだ!」


「願いを…?」


「うん、今日からキミが僕のご主人様。」


「ご主人様?」


「そうだよ。キミに何か願いがあるのならね。何か願いはある?」


「そりゃあ、あるけど…。」


「それなら良かった!何でも願いを言ってよ!」


「とても信じられないんだけど…。あなたはどんな願いを叶えられるの?」


「できないこともあるけど、大抵は叶えられると思うよ。」


「3つだけ?」


「いくつでも。」


「本当に!?」


「だから、本当だってば。」


「じゃあ、私をずっと愛してくれるイケメンの男性を出してよ!」


「いきなりそんな願い!?」


「何?できないの?」


「僕には、やって良いことと悪いことがあるんだ。」


「何だ。やっぱり叶えられないんでしょ。」


「僕がやって良いことは、エネルギーの形を変えたり移動させたりするだけ。
世の中の仕組みや概念、人の気持ちとかを変えるのは良くないことなんだ。
厳密に言えば全てエネルギーなんだけど…。」


「あ~!もういい!何言ってるか全然わかんないし!
結局、できないっていうことでしょ!?」


「だから、できるけど良くないことだから…。」


「わかった!じゃあ、私の言うこと何でも聴くようにしてよ!」


「それって、もしかして願いなの?」


「うん。」


「ご主人様はズル賢いね…。」


「そんなのどうでもいいから!できるの?できないの?」


「できるけど、しちゃいけないことなんだよ…。」


「なんだ、やっぱり何もできないんじゃない!」


「もう!わかったよ!ご主人様の言うことを聴くよ!」


「はい!じゃあ、契約成立ね!」


「変なご主人様に拾われちゃったなぁ…。」


「何か言った?」


「ううん、何も…。」


「ついでにもう一つお願い。ご主人様って呼ぶのやめて。
何かしっくりこないから。私のことは、ユリって名前で呼んで。」


「わかったよ。ユリ。」


「じゃあ、願いを叶えて!イケメンで私を愛してくれる人を出して!」


「気は進まないけど…。」



そう言うと、ライトがチカチカ点滅しました。



「何?アナタが光っただけで何も起こらないじゃない!」


「ちゃんと叶えたよ!」


「叶えたって、どこにイケメンがいるの!?」


「イケメンイケメンってうるさいなぁ…。
この世の中にはご縁っていうものがあるの!
出逢いの縁っていうのは、いきなりポンッと繋がるわけじゃないの!
ちゃんと書き換えたから大丈夫。これから出逢いがあるから。」


「書き換えたって何を?」


「あ、ごめんごめん。それは気にしないで。」


「ふ~ん、本当に良い出逢いがあるのかなぁ…?」


「僕を信じてよ!」


「わかった。面白そうだから、とりあえずアナタを信じてあげる!」


「とりあえずかぁ…。」


「ところで、アナタにも名前があるの?」


「ユリに会った時、最初に自己紹介したじゃない。」


「最初?僕?アナタの名前、ボクって言うの?」


「違うよ!僕の名前はライト!魔法のライト!」


「あはは!そのまんまだ!おっかし~!」


「笑わないでよ!ユリはデリカシーが無いんだから!」


「わかったよ!ごめんね、ライト!一緒に帰ってもいいの?」


「うん、ユリにまだ願いがあるなら、持ち歩いてくれたらいいよ。」


「よし!じゃあ、カバンの中に入ってて。」


「ちょっと、乱暴に詰め込まないでよ!」


「はいはい。」


「このカバンの中、もっと整理した方がいいよ。」


「うるさい!ライトの方がデリカシーが無いじゃんか!」


「僕は素直な意見を言っているだけだよ。」


「ライト、ちょっとメンドクサイね…。あ、そうだ!」


「なあに?」


「電車乗るの疲れちゃうから飛んで帰りたいんだけど…。
そんなこともできたりする?まあ、できないだろうけど。」


「またバカにして!できるよ!」



再び、ライトが点滅したかと思ったら…。

私の体が空に浮き、自由に空を飛べるようになったのです。



「ちょっと!凄いね!ライトは本物だ~!」


「良かった。やっと信じてもらえたね。」


「このまま飛んで帰る!これならイケメンも期待できるね!」


「そ、そうだね…。」



こうして、ユリとライトは自宅の方向へ飛んでいったのですが…。

さて、ユリの望みは叶えられるのでしょうか?

次回をお楽しみに♪


<第二話へ続く>




★魔法のライトの前作は、以下をご参照下さい。


<第一話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10733739344.html


<第二話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10735305409.html


<第三話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10737884131.html


<第四話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10739395395.html


<最終話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10741372640.html




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