ライトにチャンスをもらって理想の彼女を手に入れてからというもの…。
私はとても幸せでした。
そして結婚に至り、ビジネスも順調に進んでいました。
しかし…。
「お前がしっかり家のことをやらないからだろう!」
「私が全て悪いって言うの!?
よく言うわ。毎日、飲み歩いて家のことなんて何もしないくせに!」
「それは仕事上の付き合いで仕方が無いことなんだ!
だいたい、俺が金を稼いできてるから暮らしていけているんだろう!
ずっと家に居て寝転んでいるだけのくせに、よくそんなことが言えたもんだ!」
「家で寝転んでいるだけ!?
あなたは家事の苦労を知らないのよ!
これなら外で仕事をしていた時の方がよっぽど楽しかった!」
「文句を言うなら出て行け!」
「ええ、そうさせてもらうわ!
その代わり、慰謝料はたっぷり請求させてもらいますからね!」
バタン!
白い木目調のドアを勢いよく閉め、妻は家を出て行きました…。
「はぁ…。」
「ご主人様、また溜め息をついているよ。」
「あぁ、そうだな。
いつからこうなってしまったのだろう…。
理想の妻と一緒になって、これからは幸せな生活が待っていると思ったのに…。」
「ごめんね、僕が与えたチャンスでこうなってしまって…。」
「いや、ライトは何も悪くないさ。」
「ねえ、一つ聴いてもいい?」
「ライトが質問してくるなんて珍しいな。なんだ?」
「ご主人様にとっての幸せってなあに?」
「・・・。そうだな、何なんだろうな?」
「僕はご主人様の願いを叶えて幸せにするためにいるんだ。
だから、ご主人様の幸せが何なのか知りたいと思ったの。」
「幸せか…。望むものを手に入れて幸せだと思っていたんだけどな…。」
「願いを叶えて幸せになれるなら、僕は何でも叶えるよ。」
「ありがとうライト。」
「ううん、それが僕の幸せだから。」
「幸せか…。俺は幸せを追い求めてきたつもりだったんだけどな…。」
「僕も同じだよ、ご主人様。」
「そうだ!」
「なあに?」
「ライト!俺を幸せにしてくれ!幸せを感じられるようにしてくれ!」
「え!?」
「今までの方法でも幸せは手に入れられなかった。
ほんの一時の幸せしか手に入らなかった。
だから、常に幸せを感じられるようにして欲しいんだ!」
「幸せを感じられるように…?」
「あぁ、頼むライト!出来るか?」
「何度も言ったけど、僕は人の気持ちを変えることは出来ないんだ。」
「そうだよな…。やっぱりダメか…。」
「・・・。」
「俺は何のために生きているんだろうな、ライト?」
「ご主人様…。本当はご主人様を幸せに出来るかもしれない。でも…。」
「やり方があるのか!?」
「うん、出来ると思う。でも後悔はしない?」
「幸せになるのに何を後悔することがある?」
「そうだよね、一応聴いてみただけ。わかった。じゃあ願いを叶えるよ。」
「ああ、頼む!」
「願いを叶える前にもう一つ質問してもいい?」
「なんだ?」
「僕を拾ってくれてご主人様は幸せになれた?」
「当たり前じゃないか!ライトがいたから今の生活があるんだ。
ツライ時もライトが居てくれたから、乗り越えてこれたんだ。」
「・・・。」
「そして、今度またライトに幸せにしてもらえる。
こんな嬉しいことは無いよ。」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。じゃあ願いを叶えるね。」
「ありがとうライト。」
「幸せになれるといいね、ご主人様。」
いつも願いを叶えてもらう時のように、ライトがチカチカと点滅しました。
ライトが少し悲しそうな話し方をしていたこと…。
それが何故なのか、その時の自分は気付かなかったのです。