自分でビジネスを始めてから数年後…。
私は机の上で頭を抱えていました。
「こんなはずじゃなかったのに!」
「ご主人様、今日も落ち込んでいるの?」
「そりゃあ、落ち込みたくもなるだろう!
新しく始めたビジネスはことごとく失敗。
ライトにお金のことは頼まず、自分だけの力で稼ごうと思ったのに!
最初にあった資産も大半を失ってしまった…。」
「それは仕方ないよ。」
「仕方ないってどういうことだ!?」
「だって、元々ご主人様が稼いだお金じゃないんだから。
お金持ちの二代目が資産を食い潰すようなものだよ。」
「なんだと!?」
「でもご主人様、働き始めた時は幸せそうだった。」
「・・・。」
「お金が沢山あっても、退屈だって言ってたよ。」
「そうだ…。確かにそうだ。
お金を使うことが最初は楽しかった。
でもそこには継続する幸せが何も無かったんだ…。
だから自分の手で仕事を始めたのに…。」
「お金を持っていることとビジネスの才能は違うっていうことだよ。」
「相変わらずライトはハッキリ言うな…。ん?
待てよ?才能だって!?」
「うん、ご主人様は才能が無かっただけ。」
「ライト!次の願いが決まった!」
「久しぶりの願いだね。なあに?」
「俺に才能を授けてくれ!」
「え!?」
「出来ないのか?」
「前にも言ったことがあったけど…。
僕にはエネルギーの形を変えることしか出来ないんだよ。」
「なら出来るだろう!?
ビジネスの才能やスポーツの才能。
それらはどこで決まる?脳だろう?
だったら、脳内部の作りを変えれば才能が授かれるはずだ!違うか?」
「・・・。」
「ライト!お前は俺が幸せなら満足だと言っていただろう?
初めて出逢った時に言っていたはずだ。
ご主人様の願いを叶えるために存在している…というようなことを!」
少しの沈黙があった後、ライトがチカチカと点滅した。
「わかった。わかったよご主人様。
確かに僕はそう言った。ご主人様が幸せならそれでいい。
でも本当にご主人様はそれで幸せになれるの?」
「ああ、なれるさ!」
「本当はやってはいけないことなんだ。
人にはそれぞれ長所と短所があるよね。
それは全て意味があることだから…。」
「意味なんてどうでもいい!
才能があれば人は生まれながらにして勝ち組だろう!?」
「短所は隠された長所なんだよ。
ご主人様はそれに気付いていないだけだよ。」
「俺に説教するのはやめろ!」
「説教なんて…。」
「いいから早く俺にビジネスの才能を授けてくれ!
そして外見もカッコ良く変えてくれ!」
「・・・わかったよ。僕はご主人様が望むようにするだけだから…。」
こうしてライトからビジネスの才能と外見の良さを授かりました。
その後、嘘のようにやることなすこと上手くいき、
私の資産も順調に増え、女性に困ることもありませんでした。
しかし、一向に満足することは出来なかったのです…。
「なあ、ライト。」
「どうしたの?」
「俺はライトにお金持ちにしてもらっても幸せは感じられなかった。
だから、その過程が楽しいのだと思い、才能を授けてもらったんだ。」
「楽しくなかったの?」
「いや、成功までの過程は楽しい。けど、やっぱり最初だけなんだ。
だから寄付を行ったりもした。寄付をして喜ばれはしたが…。」
「それも嬉しくなかったの?」
「いや、嬉しいさ。でも何かが違うんだ。」
「ご主人様は、どうして違うのだと思うの?」
「それは…。まだわからない。ただ…。」
「ただ?」
「お金があるから、俺のところに人が集まってくるだけだと感じるんだ。
女性にもモテる。だけど、それも外見やお金に惹かれてきているだけだ。
俺にお金が無かったらどうだ?ブサイクだったらどうだ?」
「さあ?僕には何とも言えないよ。」
「それこそ複数の女性と付き合ったりもしたけど…。
相手の奥底にあるものが見えるんだ。
やっぱりお金や外見という価値を求めてきているだけだ。」
「お金も才能も外見の良さも持っているのに幸せじゃないの?」
「あぁ…。」
「僕に何か出来ることがある?」
「ライト、僕に恋人を授けてくれないか?」
「恋人?」
「ああ、信頼出来る恋人を。
お金や外見目当てではなく、僕自身を好きになってくれる恋人を。」
「それこそ出来ないよ!僕は人の気持ちを変えられないと言ったでしょう?」
「それなら、チャンスだけでも与えてくれ!
物質的なものを求めない誠実で素敵な女性と会えるチャンスを!
あとは自分で何とかする!」
「チャンスだけでいいの?」
「ああ、一度でダメなら何度でもやるさ。」
「わかったよ。じゃあ、成功するまでチャンスを与えてあげる。」
「ありがとう、ライト。」
こうしてライトから女性と出逢うチャンスを与えてもらいました。
何十回も失敗したものの…。
ようやく理想の彼女を手に入れることが出来たのです。