5月18日(生後5日目)

午前。

いつものように、搾乳をしてあおくんの面会に行く。



主治医の先生が話しかけてくれる。



お話ししたいことがありまして、、


とメモを書きながら説明してくださる。

赤ちゃんに、けいれんが少し見られています。



脳出血がある赤ちゃんは、


脳への刺激があると、けいれんが出やすいです。



あごがガクガクしたり、


身体が長めの時間ピクピクしたり。



なので、抗けいれん薬を入れさせてもらって、



けいれん症状は落ち着いています。



あともう一点ですが、動脈管についてです。






赤ちゃんはお腹の中にいてる時、



肺呼吸をしていないので、肺に血液は流れていません。


心臓の動脈管という管で、肺へ流れる動脈と、


全身に流れる大動脈の間を橋渡ししていて、



血液が全身に流れています。



しかし、生まれた後は、血液は肺に流れて、



呼吸により、酸素を体内に取り込むようになります。




それにより、動脈管は数日で閉鎖します。



閉鎖しないと、



圧が高い大動脈の方から肺動脈の方に


血液が余分に流れるので、



肺出血を起こしたりします。


動脈管の自然閉鎖を見ていましたが、



まだ閉鎖する兆候が認められないので、


閉鎖の治療をしたいと考えています。



方法は2つあって、

1つ目は、薬を使って様子を見ること。


ただ、この薬は3回投与して様子をみるもので、



時間もかかりますし、副作用も考えられ、


お子さんには負担がかかると考えています。



もう一つの方々が、手術を行うこと。


動脈管をクリップでとめる結紮術。


こちらの方が、時間をかけずに閉じることができるので、



手術の方がよいと考えています。


手術であれば、保護者さんの同意があれば、


今日のお昼からでも手術が可能です。



とのこと。



手術。。。


どうしたらいいんだろう。


旦那さんに電話しないと。


デイルームは既に誰かがいてる。


内容聞かれたくない。


エレベーターホールには、


NICUで会って話すようになった産婦さんがいてる。


今は会いたくない。




病棟に戻り、看護師さんに、


旦那さんと話がしたくて、、


先生から言われたことがあって、、、


誰にも聞かれたくなくて、、、


と伝える。


看護師さん、談話室という小さな部屋を


案内してくださった。


旦那さん、すぐに行く、と。



30分後、旦那さん到着。



病棟看護師さんと共にNICUに向かい、


NICU看護師長さんに部屋に案内される。


主治医の先生と、別の新生児科の先生が来られる。



主治医の先生が旦那さんにも


私に話してくださった説明をしてくださる。



旦那さんは、ずっと先生と話したいと言っていた。




一番聞きたいことは、




安楽死の選択肢があるのかどうか。




私も漠然と聞きたいと思っていたが、





とても聞きにくい質問だった。




口にするのも苦しい。




あおくんを思うと、勇気がいる質問で、



あおくんを思うと、聞かないといけない質問で、



苦しい質問。



旦那さんは、私の隣で、しっかりと先生に聞いてくれた。



先生は、


チューブを抜いたりはできないです。と。



そういった選択はできないとのことだった。



ただ、今回の説明でも、



あおくんにとって優位と思われる手術療法と、



あおくんにとって負担と思われる薬を使う治療の



2つを示された。



産後1日目、脳出血が広範囲に及んでると説明があった時も



リスクが高いとされる開頭術と、



手術を行わず、経過をみる方法


2つを示された。



リスクが高い方法も、選択肢として挙げられている。



生命がなくなってしまうリスクがある治療方法。




こちらをあえて選ぶという選択肢は与えられている。



今回は、動脈管閉鎖のために、


薬を使うか、手術を行うか。



夫婦で答えられず、時間が経過していく。



看護師長さんが、



お二人でじっくり話し合うことが必要のように思いますね。


部屋のご用意をさせてもらうことはできますので、


今は話し合っていただければ。
    


と配慮してくださった。



話し合う時間をいただいてから、またお返事させてもらいます。



ということになった。



あと、もう一つずっと先生にお聞きしたいことがあった。


私、



私に起こった母体胎児輸血症候群。



これは考えられる原因は、やっぱり分からないものなのでしょうか?



あおくんをお腹に留まらせることができなかった自分を責めてしまう。


どんなことがよくなかったのか、怖いけど、知っていたい。



質問しながら、涙がでてくる。



先生、



原因は不明のものなんです。




決して、お母さんのせいとかではないですからね。



その言葉にも、涙がでてくる。



原因は不明。




私は血圧も正常。特に健康状態に異常のない、妊婦だった。




気づけば、赤ちゃんの貧血を引き起こし、



赤ちゃんが苦しい状態に


すぐに気づくことができなかった。



自分を心の中で責め続けている自分に気づく。





そして、先生方は先に退出される。




旦那さん、看護師長さんに、


僕は、助かると聞いたから、帝王切開を選んだんです。


脳出血のリスクは、産まれてから聞きました。


初めから知っていたら、帝王切開をしないことも



考えたかもしれません。


僕は何も知らなかった。


助かるんだったら、帝王切開やってもらおうと、


そう考えることしかしなかった。


先生は、ここまでのリスクがあることを、


帝王切開前には分かっていたのでしょうか?



と問う。


看護師長さん、



そういう疑問も、直接先生方に聞いていただいたらいいと思いますよ。


私たち看護師からも伝えることはできますが、



お父さんお母さんから伝えてもらった方が、


ちゃんと伝わります。



先生にお伝えする機会はきちんと作ることはできますから。と。




看護師長さんのご配慮の元、

病棟の階のデイルーム横の部屋を

私たちに与えてくださった。



旦那さんと話す。



安楽死の選択はできないんやね。



でも、リスクが高い治療を


保護者が選ぶことができる。



私がそう感じたことを、
旦那さんも同じように捉えていた。



私、以下女の子 
旦那さん、以下男の子


女の子

手術をすると、動脈管が閉じて、
またあおくん命は助かる。



それがあおくんにとっていいことなのかな。



これって、帝王切開の同意を待たれてる時に似てる。



帝王切開をすれば、赤ちゃんの命は助かる


でも私は、未熟性が高いとされる今産まれることが、この子にとって幸せか。



お腹の中で自然に任せるのが良いのでは、と


思った時に似ている。



治療をして、生命維持を助けるのか。


それとも、自然にまかせるか。

自然に任せるとは、今回の場合、



提示されたどちらの治療も選択しないという選択か。



治療方法があるのに、それをしないということ。




これもできるのかはまた聞かないと分からないけど。



何もしなければ、あおくんにとって生命危機であるから、


今回、2つの治療方針の選択肢を
決めるように求められたんだと思うけど。




旦那さん男の子



おれは正直なところ、障がいが重たい子どもを



みていく自信はない(先が見えない不安から)。



何もしない選択か。


それか、あえて勧められていない、くすりを使う方の選択をするか。


あおくん、今回も手術をして、また命の継続を助けられても、


脳の出血の状態は改善されるわけじゃないんやんな。



ほんとに、脳の出血があるかないかは大きい。


こんな状態になる可能性があるんやったら、


おれも帝王切開(するかしないか)考えた。





どうしたらいいんやろ。



………



何もしないで、様子をみるって言う?



女の子

………



何もしないでいることで


リスクが高くなってきてるから、



今回聞かれてるんだと思う。




何もしないで動脈管が閉じるかをみてきた。


それが閉じる兆候がないから、


治療しようということになったんだろうね。


何もしない、選択かぁ。。。




できるのかな。。。


………


手術をすると、生きつづけられる。




でも、それがあおくんにとって良いことなのか。


………



(わからない。何をどう考えたらいいのか)



(治療をしない、、、あおくんが生きることができる方法を知っておきながら、そっちを選択する……)



(そんなこと、、、苦しい)



(頭が痛い。くらくらする)



3時間おきの搾乳もあり、



夜もあおくんのことで考え事をしたりしていた。



考えることがとてもしんどくて、頭が痛くなってきた。



旦那さんに、




ちょっとしんどい。


 
と言って、椅子を移動して、机に顔を伏せる姿勢を取ろうとする。



旦那さん、

みかちゃん、今それはあかん


今は考えないと。と、



私を元の椅子に戻させる。



私の思考


(あおくんに治療をせず、静かに状態が悪化するのを見届けるなんて……)


(私たち親はどんな顔して、


その時間、あおくんに会うんだろう)


(生きようとがんばっているあおくんに、


どんな顔をして……)


(産まれてきてくれたあおくん…)



(静かに死なせるなんて、、、


私、、、そんなことできない)



(私、おっぱいが出るようになってきたよ)



(何のためにおっぱいが出るようになったの)




(あおくんに飲んでもらうためでしょう?)



(あおくんを助けないなんて、、、


私、できないよ…)



旦那さん、



あおくん、がんばってる。


治療をしないとか、そんなこと話しあってたら、



一番悲しいの、あおくんかも…



私、


……私も、私もそう思う!!



私、あおくんがいなくなるなんて、



考えられない。やっぱり



あおくんが生きる方向で考える、



私も全てのことに前向きになれるってことに、


今気づいたよ。



私はあおくんが生きていてほしい。



私はあおくんをずっと、ずっと見守っていきたい。



一緒にこれからの人生、歩んでいきたいよビックリマーク



そう考えれたら私、今すごく、すごく楽になった。



私はそれを望んでた。


やっと分かったよ。


旦那さん


うん、親のおれたちが、希望をもたないと


あおくんが悲しむ。


あおくんが、命の尊さをすごく教えてくれた。


手術、お願いしますって言おうか


私、


うん!

私、気持ちがすごく楽になったよ


これまでの時間、いっぱい考えて、

そして、この時間、いっぱい考えて、


あおくんと一緒に生きていきたいって思えた。


聡くんと一緒に考えれた、この時間が


とても貴重だったね。


この時間をいただけて、本当によかった。


NICUに戻ろう。



私も旦那さんも、考えてをまとめることができたよ。


あおくん、手術受けようね。


呼吸が楽になってなるからね。


先生達を信じていたら、大丈夫だからね。



病棟の看護師さんに、NICUに戻りたいと伝える。



私たちはNICUに戻る。