本物の自分へ〜問題作?「娘の友達」を読む〜 | みかんともブログ

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特にマンガ、アニメなどの二次元、音楽、ライトノベルが中心ですが、最近はポップカルチャーを詠む短歌についても触れています。
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本物の自分とは?
マンガ「娘の友達」を読むとそんな問いかけを受けるかもしれません。
主人公の市川晃介(いちかわ こうすけ)は、家庭では父親として、会社では係長として、理想的な自分を演じるように生きてきました。
妻と死別したことが生活をすさんだものに変えていきますが、
ある日、高校1年生の娘美也(みや)の友達、如月古都(きさらぎ こと)との出会いで、
以降の人生が大きく揺らぎ始めるのでした。
会社での重圧、娘との関係の心労、そんな中で古都との関わりが救いに変わってくるのでした。
そして、彼女の前では「本物の自分」でいられることを単行本第2巻でははっきりと理解するようになるのです。

この作品は、主人公晃介の心理描写が言葉を伴って多見されます。
彼の取り巻く状況や心境が読む者にも伝わってくるのです。
一方、古都の心情は言葉では明示されません。
彼女のしぐさや行動から察するばかりです。
とはいえ、彼女もまた、晃介と同じように鬱屈した心情の中で生きていることが察せられます。
特に過干渉の母親との関係において。
そして、彼女も晃介の前では、秘めていた「本当の自分」が引き出されるのでしょう。

第2話では、出会って日が浅い彼女が(実は子供のころで会っていたことが分かりますが)、不意に晃介の頭をなでるシーンが出てきます。
コミックDAYS第2話より
 
高校1年生の女子が40前後の男性の頭をなでてほめる。
まるで幼稚園の先生が園児をほめるかのように。
 
晃介はこの行動に戸惑いました。
多くの成人男性が実際にこんなことをされたら同じように狼狽することでしょう。
僕はこのシーンに古都の中の母性が発露したのだろうかとも思われました。
それが中年男性に対して示されるのはめったにないことだとは思いますが、
もしかしたら母性愛に満ちた姿が古都の「本物の自分」なのかもしれません。
 
僕は
人は多面的な存在であり、その時その時の自分が「本物の自分」と言え、
究極的な唯一の「本物の自分」はないのかもしれない
という感覚を持つほうですが、
古都の「本物の自分」が果たしてどんなペルソナ(人格)なのか
には興味を覚えます。
「本物の自分」、これは生きる上での実は大きなテーマかもしれません。
 
読者はこの作品を読み進むとき、「本物の自分」を考えるヒントを得られる、
そんな予感も抱かせる作品ですよ~。