僕が気になったのは、中国のNPT文書への対応でした。会議の最終文書に被爆地広島・長崎の訪問を入れるように日本政府は提案しましたが、中国の強い反対で見送られました。
中国の代表は「歴史を歪曲するものだ」「(日本の提案の)目的は日本を第2次大戦の加害者でなく被害者として描くことだ」と主張しました。
これに対して被爆者団体や被爆地の首長は一斉に反発しました。
日本が中国を侵略した加害者であることは心すべきです。
しかし、中国政府の主張は、核兵器の恐ろしさや残虐さから目を背けた、核保有国の狭量な態度のように感じました。
そして、原爆投下にまつわる二つのマンガ作品が思い出されたのです。
一つは『はだしのゲン』(1973-85:中沢啓二)です。被爆者でもある作者の自伝的要素のある作品です。国民学校2年の中岡元少年が太平洋戦争中の殺伐とした時代背景の中、原爆投下で家族や友人を失いながらもたくましく生きる物語です。僕も小学校の教室の本棚に『はだしのゲン』が置かれていたため、読んでは戦争の悲惨さや核兵器の恐ろしさを子供ながら感じ入っていました。僕は妹友子の死まで(第一部・週刊少年ジャンプ掲載分)までしか読んでいなかったのですが、後年、この続きがあることを知り驚きました。
現在、この『はだしのゲン』には、強姦の描写や差別語、極端な政治性から、小学生に読ませることに批判もあり、以前ほど学校教育には取り入れられていませんが、原子爆弾を取り扱ったマンガ作品としても核兵器の恐ろしさや悲惨さを伝える作品としても出色のものと思います。
次回は『夕凪の街 桜の国』(作:こうの史代)を取り上げたいと思います。
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