mikuoのブログ

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「さあ、こちらへおいで」

むかしむかしあるところに
海の向こうの王国の
全ての娘が見惚れるは
齢十八の王子様

絢爛豪華な調度品
見目麗しき召使
国の勢いは凄まじく
手に入らぬ物有りはせぬ

恋の相手は数知れず
今宵一夜限りの伽(とぎ)
王子に見初められる者は
未だに現れぬ

「さあ、こちらへおいで」

夜の華 妖しく咲く
鮮やかな彩りで
近寄る娘は数知れず
嗚呼 けれど二度と選ばれはせぬ

淋しき王子は人知れず
忍んで隣国の城下へ
緑の女は誰一人
王子の事など知りはせぬ

ある裏通りで運命の
悪戯(いたずら)で出会ったふたりは
突然恋に堕ちました
身分違いの儚き恋

夜な夜な出掛ける王子様
家臣たちも気付きだす
「相手の女は『あの娘』
決して許されぬ恋」

「どけ!邪魔をするな!」

夜の華 妖しく咲く
狂おしい彩りで
周りの制止を振り切って
嗚呼 今宵も彼女と忍び逢う

大臣たちは策を練る
王子に内密に敢行
「悪逆非道の『黄の国』の
『悪ノ娘』を嫁がせよう」

『黄の国』の大臣たちは
扱いやすく利用できる
黄に滅ぼされる隣国は
最終的には手に入る

幾多の家が焼き払われ
幾多の命が消えていく
可憐な緑のあの娘
敢え無く血に染まる

「嘘だ、そんな筈はない!」

夜の華 妖しく咲く
哀しげな彩りで
彼の愛した緑の花芽(かが)
嗚呼 その骸にすら触れられぬ

むかしむかしあるところに
海の向こうの王国の
妃が恋した『黄の王子』
一夜限りの過ちの

史実を消されたその娘
緑の国に追放され
何も知らされず育まれ
運命的な恋に堕ちた

真実を知るは『黄の国』の
『悪ノ娘』の付き翁(おきな)
全ては大臣らの仕業(しわざ)
王子は意を決す

「ああ、僕も逝くよ」

夜の華 華麗に散る
鮮やかな彩りで
血よりも濃い真実の愛
嗚呼ふたりは涅槃(ねはん)で 結ばれる
むかしむかしあるところに
謀略渦巻く国の中
平穏の価値を知るは
澄んだ緑髪の街娘

望まれ生まれたこの命
平和のためと言い聞かせ
終わりのために演じてる
亡国の民の筋書きを

青の王子がお忍びで
この街へと来るならば
偶然装い近づいて
心にもない笑顔

「あら、はじめまして?」

悪ノ華 可憐に咲く
作られた彩で
周りの哀れな野望への
嗚呼 礎となり朽ちてゆく

街中出会った召使
自嘲を含むその笑顔
刹那に生きるもの同士
静かに心が惹かれあう

初めて微笑む心から
全て筋書きに無い言葉
互いの立場知った時
絶望するのは何秒後?

王子の心を手に入れて
予定調和の茶番劇
王女に殺され全ての
シナリオは終焉へ

「早く… 終わらせて」

悪ノ華 可憐に咲く
悲しげな彩で
決められた花の収穫は
嗚呼 もうすぐそこまで迫ってる

ある晩彼がやって来て
涙をこらえ作り笑顔
気づかぬ振りしてほほえんだ
最後は笑って死にたいな

真夜中井戸へと連れ出され
何も言わない彼見つめ
短い恋ができたこと
彼に心から感謝した

ついにナイフを握り締めて
震えてすくむ彼の手を
重ねるように包み込んで
私へと突きたてた

「…ありがとう」

悪の華 可憐に散る
愛おしい彩で
彼女の生とひきかえに
嗚呼 火種は大きく落とされた

むかしむかしあるところに
腐敗しきった王国で
亡国の革命への
生贄となった街娘

黄色と青が争って
姉が民を導くでしょう
生まれた時からそのための
筋書きだけを生きていた

ついに最後の締めくくり
彼に殺して欲しかった
筋書き改竄したのは
私のわがままね

「あぁ…ごめんなさい」

悪の華 可憐に散る
鮮やかな彩りで
後の人々は知らない
嗚呼 生贄となった街娘
むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨するは
齢十四の王女様

絢爛豪華な調度品
顔のよく似た召使
愛馬の名前はジョセフィーヌ
全てが全て彼女のもの

お金が足りなくなったなら
愚民どもから搾りとれ
私に逆らう者たちは
粛清してしまえ

「さあ、ひざまずきなさい!」

悪の華 可憐に咲く
鮮やかな彩りで
周りの哀れな雑草は
嗚呼 養分となり朽ちていく

暴君王女が恋するは
海の向こうの青い人
だけども彼は隣国の
緑の女にひとめぼれ

嫉妬に狂った王女様
ある日大臣を呼び出して
静かな声で言いました
「緑の国を滅ぼしなさい」

幾多の家が焼き払われ
幾多の命が消えていく
苦しむ人々の嘆きは
王女には届かない

「あら、おやつの時間だわ」

悪の華 可憐に咲く
狂おしい彩りで
とても美しい花なのに
嗚呼 棘が多すぎて触れない

悪の王女を倒すべく
ついに人々は立ち上がる
烏合の彼らを率いるは
赤き鎧の女剣士

つもりにつもったその怒り
国全体を包み込んだ
長年の戦で疲れた
兵士たちなど敵ではない

ついに王宮は囲まれて
家臣たちも逃げ出した
可愛く可憐な王女様
ついに捕らえられた

「この 無礼者!」

悪の華 可憐に咲く
悲しげな彩りで
彼女のための楽園は
嗚呼 もろくもはかなく崩れてく

むかしむかしあるところに
悪逆非道の王国の
頂点に君臨してた
齢十四の王女様

処刑の時間は午後三時
教会の鐘が鳴る時間
王女と呼ばれたその人は
一人牢屋で何を思う

ついにその時はやってきて
終わりを告げる鐘が鳴る
民衆などには目もくれず
彼女はこういった

「あら、おやつの時間だわ」

悪の華 可憐に散る
鮮やかな彩りで
のちの人々はこう語る
嗚呼 彼女は正に悪ノ娘