失敗と犠牲の果てにある自己満足②
ほいぃ~(・(エ)・)ノシ
本日105回目のスカーレットは、
夫の心配や女として守りたいのだという、
愛の告白を拒否して、
喜美子は「陶芸家になります」と宣言します。
夫の心配通り、1150℃で2週間の窯焚きでは、
窯が持たない、もしかすると火事になるという忠告通り、
穴窯は火を噴きました。
まぁ、火事にはならず、
結局は喜美子の追い求めた色が出来たので、
八郎の忠告は外れたのだけど…。
この妻に共感できるかと言われれば、
多くの人は出来ないでしょう。笑
酒飲み常治にも、
穴窯に取り憑かれ借金を重ねる娘にすら、
何も言わない母マツでしたが、
「もっと燃やすんや、もっと薪を入れるんや」と言う喜美子に、
驚愕・ドン引きみたいな顔してたからね。笑
何故共感できないかと言えば、
この時点では喜美子はまだ何物でもなく、
すでに莫大な借金を抱え、
家族を犠牲にしても「夢」という名の、
「自己満足」を果たしたいだけだから。
男女差別でも、男尊女卑でもなく、
一人の人間として喜美子は、
この時点ではダメ人間の部類。笑
「まんぷく」や「マッサン」という男が主人公だった時も、
成功する前はダメ人間だった。
しかし、彼らには応援しようとするのが妻だけではなく、
会社にスポンサー、そして売人がいた。
また萬平さんは、塩やダネイホンなどで金を作り、
途中で信用金庫の理事長もしていた。
マッサンはリンゴジュースを作ったり、
軍と手を結んで金を手に入れたので、
妻だけにずっと資金調達をさせていたわけではない。
更に萬平さんは元々発明家ではあるが、
大学の先生や世良、
そして妻福子の意見にも耳を傾けた。
マッサンも会社からの投資により、
イギリスでの辛い修行を経て、
しっかりとした技術と知識を手に入れてきた。
住吉酒造や鴨居の大将はその知識を買って、
ウィスキーの研究所を与えてくれた。
ゲゲゲの女房の布美枝ちゃんもそうだが、
貧乏生活ではあっても、
そこに夫の夢を信じられる土台があったんだよね。
しかし、喜美子の場合は違う。
確かに「穴窯やり」と焚きつけたのは八郎だし、
何故支えないのだ!と憤る男尊女卑脳の女にとっては、
憤る理由になるのだろうけど、
この時点では喜美子は何物でもないのだ。
土台が無い。
八郎の考えが甘い。
喜美子は最初遠慮したのに。
と、八郎「男」をどうしても責めたい輩がいるのだけど、
家族に仕送りし、父親の借金を返しながら、
息子が欲しいテレビは買わず、
靴下を繕い、
夫に小遣いすらも与えないほどケチ…いや、
金にキッチリした喜美子が、
「お金のことはうちに任せときぃ!」と胸を叩いていた、
あの喜美子が!
まさか湯水のように金を使い、
穴窯に執着するとは誰も想像できないでしょう。笑
ちょとまて!と止めた八郎は正しい。
彼を責めることなど出来ない。
ましてや喜美子はその時、
何の土台も無いのだ。
「おしん」で陶芸家を目指す希望(のぞみ)のように、
八郎も喜美子も名のある師匠に弟子入りしていない。
喜美子の陶芸の師匠は八郎。
八郎はのちに金賞を獲って有名にはなるが、
喜美子が教えてもらっている時点では、
ただの丸熊陶業に勤める会社員なのだ。
八郎は大学で陶芸に魅せられ、
技術と知識は手に入れたものの、
喜美子の師匠となった時には、
結局開発研究所の社員さんでしかない。
最終的に喜美子も腕を上げ、
大量生産出来る陶工にはなっていたものの、
どちらかと言えば、
ミッコー騒ぎと共に女性絵付け師としては、
多少有名になっただけ。
新人賞を先に獲った八郎の名があるから、
大量生産で生活を支えることも出来たけど、
八郎が家を出てからは、
発注すら無くなったわけだから、
やはり何物でも無かった。
皮肉にも絵付け師としての才と、
夫に捨てられた可哀想な妻としての同情で、
橘さんが発注してくれたのみ。
腕も知識も八郎から学んだ喜美子ですが、
穴窯に関しては、
窯業研究所の所長から聞いたうっすい説明と、
小学生喜美子が、
「こんなんあかんやん、ゴミや」
と、蔑んだ作品しか生み出せず、
自らも穴窯に絶望し「あかん」という言葉と共に、
夢を諦めた慶乃川(村上ショージ)さんが残したノート。
多少古い文献などでも調べたようだけど、
あとは喜美子が借金してまで実践した、
失敗から見つけた知識のみ。
これでは信じてくれと言われても、
やっぱり信じられんのよな。
長くなったのでつづく
大山