2017年 ファンタジーノベル大賞 受賞作

 

    『隣のずこずこ』 新潮社文庫 柿村将彦 著

 

 

「村を壊します。あなたたちは丸呑みです。ごめんね」

二足歩行の巨大な狸とともにやってきたあかりさんはそう告げた。

村を焼き、村人を飲み込む〈権三郎狸〉の伝説は、古くからこの地

に語り継がれている。あれはただの昔話ではなかったのか。

中学3年製の住谷はじめは、戸惑いながらも抗おうとするがー。

(文庫裏より)

 

 

一言で言えば「何これ?怖い」である。

 

権三郎狸の昔話は、ある日突然女が村にやってくる。

そして女が去った後に権三郎狸がやってきて村人を飲み込み、

村を焼き払い全てを無かったことにする、その村の存在そのものを。

だが今回は権三郎狸と女(あかりさん)が一緒にやってきて、これから

一ヶ月後に村人を飲み込み、村を焼き払うという。

 

この一ヶ月という猶予は何なのか。この理不尽な状況は何なのか。

だがそれをしょうがない的に受け入れてる住民達こそ何なのか。

権三郎狸に呑まれた人、そして焼き払われた村は周囲の人々から

忘れられていく、存在したこと自体が無くなる、その恐怖。

もうなんかいろいろとホラーかよ!ホラーだね!

 

最初は壊された後の再生みたいなのかと思ったけれど、いや全然

呑まれて、壊され、忘れられ、救いはない。

最後まで「権三郎狸」とは一体何なのか、わからずじまいだった。

 

この舞台となった矢喜原村や村人達の最後は描かれていない。

主人公のはじめは「あかりさん」を殺すことによって入れ替わり

ひとり生き残るが、そのことに対しての割り切りもなかなか凄い。

不思議な世界観、読後感に何とも言えない本だった。

 

 

by鬼灯