ところが奇妙なことに、いまの日本の画壇を見ると、頼まれもしないのに一生懸命に職人芸を擬態したような絵ばかりだ。

 じっさいに注文主がいれば、その枠のなかで自分を生かしたり、逆手をつかったり、かえって大胆なこともできるけれど、頭で想像するだけの架空の注文主に合わせようとするものだから、こうやったら嫌われるんじゃないか、あんまりどぎつくてはダメだろう、おとなしすぎて目立たなくちゃ困る、流行に遅れちゃたいへんだーなんて、あらゆることに気をかねて、最大限に臆病になってしまう。バカげた話だよ。


「自分の中に孤独を抱け p153、154  岡本太郎」青春出版社