中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)とは、中央銀行が発行するデジタルの法定通貨のことだ。そして、CBDCを世界で先駆けて作り始めているは中国だ。日本はといえば、日本銀行のホームページを見るところによると、現時点では発行する計画は立てていないことをはっきりと表明している。しかし、勉強会は頻繁に行われており、検討だけはしている模様。

各国の動きはどうだろうか。中国に続いて積極的に導入準備に入っているのが、EUとスウェーデン。スウェーデンはEU加盟国ではあるが、ユーロではなくクローナという独自の通貨を発行している。アメリカはといえば、Meta(フェイスブック)が作ったlibraが頓挫したため、Diemという名に変えて、米ドルと連動させた法定通貨を自国内で普及させようと頑張っている。

日本は世界で第3位のGDPを誇るにも関わらず、この点においては中国、アメリカに完全に後れを取っている。日本では電子決済そのものの普及率が世界的に低いことが影響しており、デジタル通貨を普及させるには何かと影響度が大きいようだ。

CBDCの普及は、世界の覇権争いにとてつもなく大きな影響を与えるといわれている。米中の覇権争いが激しいが、その中で日本の立ち振る舞いが、今後日本の経済にどの程度影響を及ぼすか分からないと言われている。残念なことではあるが、ドメスティックな経営戦略を取ってきた悪影響は、後々、どこまでも尾を引くことになるということだ。

さて、CBDCが普及したことによる最大のメリットは何かといえば、国際送金で手数料がかからないということだ。「海外に送金することなんてないし、そんなに重要なことなのか?」と、思うかも知れない。確かに、一般市民が海外に送金する機会なんてほとんどないだろう。しかし、世界の金融市場では、マネタリーベースの何倍ものレバレッジがかかったマネーが流通しているのだ。富裕層からしてみれば、これほど重要なことはないのだ。

仮想通貨の中で今一番普及しているのは何といってもBTCだ。法定通貨に代わる仮想通貨は、BTCが一番近いと想像されていた。しかし、BTCはボラティリティが高く、ほとんど、投機目的としてしか使われていない。BTCが通貨として普及するのは既に現実的でなくなってきている。そこで、ボラティリティを安定させる仮想通貨として、ステーブルコインが生まれた。ステーブルコインは、経済の変動に合わせて、自動で流通量が調整できる仕組みがアルゴリズムとして組み込まれているのだ。

国境の垣根を越えて、ステーブルコインを世界でいち早く流通させようと考え出したのがマーク・ザッカーバーグだ。そして、Meta(フェースブック)はlibraというステーブルコインを作った。各国の中央銀行が担っている役割をいち民間企業が担おうとして動き出したのだ。しかし、この計画は各国の中央銀行からの猛批判にさらされ、結局頓挫に終わった。

マイヤー・アムシェル・ロスチャイルドが言った有名な言葉がある。「私に一国の通貨の発行権と管理権を与えよ。そうすれば、誰が法律を作ろうと、そんなことはどうでも良い」

国民国家の幻想を打ち砕き、国家よりも強い権力をいち企業を持つといった野望が、マーク・ザッカーバーグにはあったのだろう。

そもそも、通貨の発行は国家しか行ってはいけないといった規制はどこにもない。通貨の発行は国家が行わないと、そもそもうまくいかないものだという考えについては、専門家の間でも意見は統一されていないのだ。現に、アメリカのFRBも本質的にはプライベートバンクだったりする。

さて、デジタル人民元の準備が着々と進められている中国であるが、中国における、電子決済の普及率は爆発的に高い。電子決済とは、日本でいう、PayPay、d払い、楽天ペイ、auPAYのことだ。中国では多くの若者が、既に普通に使っている。中国で一番普及している決済アプリは、アリババの傘下にあるアントグループが作ったAlipeyだ。このアントグループが香港と上海の証券取引所にIPOしようとしたところ、国家によって、上場が規制されたという話が、少し前に話題になった。上場すれば、予想される調達額は史上最高になるだろうと前評判されていたにも関わらずだ。株主にとってこれほどのショックはないに違いない。それにしても、中国国家はなぜアントグループをそれ程脅威とみなしたのだろうか。恐らく、CBDCの覇権をアリババに握られたくなかったのだろうといわれている。

さて、CBDCが普及したら今の銀行はどうなるだろうか。CBDCが普及すれば、各国間がCBDCの競争にさらされ、手数料は極力低くなるだろうといわれている。そうすれば、手数料と利子で儲けていた銀行の存在意味は消えてなくなる。そもそも、イスラム金融では利子など取っていないのだ。利子をとって儲けようとする仕組み自体、銀行が世の中で果たす役割の本質からしてズレているということだ。ユダヤ金融の脅威となるに違いない。