守ってあげたい | *★I'm Here★*

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のんべんだらり
のべつまくなし
もぐもぐタイム
無個性の暮らしぶりは
虚無感の塊
な、
還暦オバサン登場


大阪で映画を観て

友人を送った後、

タクシーで神戸に向かった。



タクシーの中で

職場の話なんかをした。
彼は笑って聞いていた。

食事を済ませ
Barに行った。


「君がボーイフレンドの

話しなんかするとさ、
自尊心を微妙にくすぐられた

気がするんだよね~。
同僚だし、飲みに行くことも
或いは、そういう関係に

なることも恋愛することも

君の自由だけど…

分かってるんだよ。

分かってる…。
オレの立場では何も言う

権利もないって…

気づかれない程度に

嫉妬を抑えこむとか、
嫉妬を恋の手管に使うとか…
オレもやったし、
訊いてどうなるって事でも
ないんだけどさ、
やっぱり面白くないや…

君の前では素直になりたい

何かを奪い合ったり、
傷つけ合ったりするん

じゃなくて
心と心で繋がっていたい。

君に求めているのは
心なんだよね、純粋な心。
何も計ることのない心。
ありのままのオレを
受け入れてくれる心なんだよねー」


私はワイングラスについた
口紅を指で拭いて


『最近、何かあった?って
聞いたから答えたまでですよ
食事しただけで

やましいこともないし
それに私、嘘は絶対に

つかない主義なんで…

嘘、つかれた方がいいですか?』

「今夜はガンガン

攻めてくるよねー(笑)」

彼は煙草に火をつけて
スコッチを飲んだ。

『それなんて言うお酒ですか?』

『飲む?』と、彼は

私に一口飲ませて、
私が舌を出したのを笑い、
BARのマスターに
新しいコースターをもらい、
その裏に英語で

その銘柄を書いて
私のジャケットのポケットに

入れた。



彼は言った。

「いつかpremiere付くよ。

このメモ(笑)」

『いくらで、売りましょうか?』

「そんなことする

わけないだろ?君が。」

私は意味深な笑顔を作った。
彼は私のその頬にキスをした。


私は彼を守ってあげたいと

思った
世界中を敵にまわしても…
なんだかそんな気分になった。

私の前では弱音を吐いたり、
ヤキモチをやいたり、
いつもはあんな大きな場所で
闘っている人が…



頭ん中にユーミンの
(守ってあげたい)が、
繰り返し流れた。

口ずさんでみた。


『♪So ,You Don't Have To Worry ,Worry
守ってあげたい
あなたを苦しめる全てのことから
Cause I Love You♪ 』

彼は

「決して上手くはないなー」

と、笑った 。
そう言ったあとで
私の手を取り
「夜風に吹かれよう」と、

真新しい灰皿に
煙草をもみ消した。

彼と夜の街を手を

繋いで歩いた。
心地よい風が吹いていた。

異国情緒溢れるその街並み。
水銀灯の灯りは優しく、
私達を包み込んだ。

「オレどこをどういけばいいか
わからない…
あの港まで行こうか、

客船が見えるね」

『はい』

その灯りを頼りに歩いた。
迷い込んだ路地。
キョロキョロ、二人でクスクス。
そうこうしてる時
いきなり道が開けて
客船が目の前に現れた。

私が客船をバックに立つと
彼はシャッターをきる

ポーズをした。
次にタイマーを押した

ふりをして
走ってきて並んで

ポーズをした。
そして二人で笑いころげた。

夜風があまりにも

気持ちよかったのと
少しお酒も入っていたから。


今日見た映画の話をしたり、
野球の話しをしたり、
気になるニュースの話しをした。

『ねぇ。今度あれに乗せて。
あれってどこまで行くの?』

「このあたりを周遊して、
中で食事が出来るだけだろ?
そんなにデカくないしさ、

クルーズだよ。
また、今度行こうね」





彼が部屋に戻ろうと行って
タクシーをつかまえた。





いろんなことを
心の中で考えるようになっていた。

私の求めてる幸せは
永遠ではないと
言うことが わかっているから?

お別れの時間が 近づいてくると
悪いことばっか 考えてた。

一緒にいられる

僅かな時間の中で
もっともっと素直に

ならなきゃ・・
どうしてこんなに

切ないんだろ・・



タクシーの中で 彼が言った

「オレ今すごく楽しいんだよね」

って。

私はなぜか切なさで

いっぱいだった。


高速を30分近く走った

ホテルな着いた頃には

すっかり睡魔に襲われ

倒れ込むように眠った。



本当に切なくて楽しかった。
これが恋っていう

魔物の正体なのだ。


彼の寝顔は少年のようだった。

また、あの歌が頭ン中で流れた
私は彼の髪を撫でながら
小さく口ずさんだ。


『♪So ,You Don't Have To Worry ,Worry
守ってあげたい
あなたを苦しめる全てのことから
Cause I Love You♪』