触れたその瞬間に甦る、永遠のいとおしい瞬間の数々。


鮮やかな音のうねり、きらびやかで刹那な生エネルギーそのものを、サオリさんは可視化・具現化して魅せてくれた。


もっとここに居たい。

もっともっと視たい。



お互い相手を自分のように認識して信頼し、自分自身のなかにどこまでも潜って行き、一番奥の底に到達したその瞬間ー。

物凄いエネルギーで、信じるという光と共に、海底から一気に海上へ突き上げる。


水しぶきが収まり、そこで見上げた、頭上にぽっかりと浮かぶ青白い月。


それは、とても穏やかで透き通った満月でした。






いとおしい。


くるおしい。


せつない。


かなしい。


だいすき。






ライブ前半の、ひたすら閉ざされた個のなかを深く潜って行く作業のあと、サオリさんの手は死人のように冷たかった。


その時あたしは、彼女が持っている世界を、自分の持っている限界を、とにかく壊したかった。

その、次の扉を閃きたかった。

次は何が見えるんだろうって、単純に彼女に対する興味本位で。


あたし自身は、たとえ観ている人に嫌悪感を感じさせるとしても、もっともっと汚く、汚れたかった。

どんなに深く汚い場所にいこうと、そこから必ず光を携えて、水面上に上がるってことだけ、ひたすら信じて見据えてたから。



それは、震災でたいせつなものが全て流されてしまったあのひとの、「生き上がる力」でもあった。


どんな苦境に遭っても、あたしはそのひとの「生き上がるチカラ」を信じているし、

誰しもが潜在的に持っているその力をライブで体現して、観る人自身のなかにあるその力に気付いて帰ってもらえたら、それ以上のことはない。




写真をみて気づいたこと。

歌ってるあたしがサオリさんに見える。

ある瞬間、彼女はあたしになって歌ってたのかな。

これは初めての経験。

こんなことってあるんだな。




サオリさんの伸びやかな曲線は、あたしのどんなに醜く汚い部分も、どこかに繋がっているひろい慈愛とアグレッシブに満ちた個の強い情熱で、色鮮やかなうつくしいものに昇華させてしまう。

鬱苦死さが、"美しさ"に変わる瞬間。


それを彼女は視覚的に見せてくれた。



彼女がこれまでに経験してきた、悔しさ、悲しさ、苦しみ、色んなものを全部その胸で引き受けて、時に不安でぐらつきながらも、闘い、表現し続けている彼女の、ライブが終わった後のあの表情。

すべてを受け入れる、限りない慈愛に満ちた表情。


凄いなぁ...って。

しばらくみとれた。




水面上でほとばしるそのキラキラは、深く潜れば潜るほど、汚さをえぐり出せばえぐり出すほど、泣きたくなるほど清らかに、刹那に力強く輝き出すってこと。

生きている限り、ずっと忘れないでいたい。





それから、誰よりも感謝したい、

ガッツリと音世界を構築し、表現の華を自由に咲かせてくれたメンバーたち。


ベース、サトウレイ。
ドラム、林田健一。
ギター、斎藤亮。
鍵盤、小林義範。


いつも、任せとけってドンとかまえてる。

その裏では、めちゃくちゃ自分の時間と労力を割いて、頑張ってくれてるんだろう。

近いうち、それに見合ってありあまるお礼をちゃんと返せる人間になりたい。




そして、あの空間をより魅力的に演出してくれた照明の末永さん、音響の国分さん、舞台大友さん、ライブハウスKIWA谷口さん&スタッフの皆さん、イトオン社長、はさかっち、駿介くん、物販を手伝ってくれたみどりちゃん、マッキー、シモくん。


そして、会場で同じ空気をそれぞれに共有してくれたひとたち。

遠く離れた場所から、思いを寄せてくれたひとたち。


そこで今日も生きて、エネルギー発してくれて、ありがとう。










そして今日は、おかあさんの誕生日。

電話したら、ありがとうって何回も言ってた。

子どもみたいな、可愛い声で。


こうやって、おめでとうって伝えられることが、嬉しくて泣きそうになる。


元気で生きていてくれて、ありがとう。



産んでくれて、ありがとう。










さ、部屋の掃除しよ。