「ゑひもせず…」第4巻〔夜〕その1 | ドクター三上診察所

「ゑひもせず…」第4巻〔夜〕その1

その1(通算第48章)


「どうでしたか、姫宮は」
「楽しかったですよ、いいとこじゃないですか」
「特に問題はありませんでしたか」
「心配することはないですよ、中学時代に培ったものがありますから」
「いや、その話も、少し聞いてたので」
「あれは学校に負けたんです。今更構うことじゃないですよ」
「そうですか、まあ一応気をつけてください」
「それはあいつに言っとくべきでしょ、初心者なんだし」
「彼は大丈夫だと思ってるんですが」
「甘いですよ、ああいう初心者のほうがよっぽど怖い」
「なぜです」
「悪いのにかかったとき、彼ほど純粋だと大変ですよ」
「それはないと思いますが」
「先輩なら、あいつの未来くらい、おおよそ分かるでしょうに」
「そんな超能力、あるわけないですよ」
「にしても、彼がこれから色々知れば、きっと都内に飛び出しますよ」
「どうですかね、まあ都内だからって危ないとも限らないし」
「都内が危ないのは、先輩はご存知ないですか?」

間。

「知らないと言えば嘘になりますが」
「県内の環境がまだまだ生ぬるいことを考えれば、尚更ですよ」
「あれでも、出てた頃は頑張ったつもりなんですけどねぇ」
「今の県内渉外ができたのは、先輩の尽力によるものでしたよね」
「意外と、事前に結構勉強してるんですね」
「見た目で判断しないでください」
「それは失礼しました」

間。

「そういえば、麻衣ちゃんと色々話したらしいですね」
「素敵な彼女さんですね」
「いや、あの、うん、どうも」

間。

「あ、そういえば……」