「ゑひもせず…」第3巻〔会〕その10
和喜は、早速、姫宮の黛さんに声をかけ…ようと思っていたが、
そう、だがしかし、近づく途中で、黛さんの見た目に気がついた。
お嬢様カットの髪、顔はふくよか、パーツは…微妙。
不満が溜まって、それが出てるんじゃないかと思う表情。
体格を判断しても、「ふとましい」という表現が、似合うような。
ここで戻るのも挙動不審だと思い、いや、本気で戻りたかったが。
とりあえず、隣の板倉さんとやらに目をやってみた。
小柄で小顔、大きめの目に、髪はショートでさらさら。
……話しかけるなら、こっちかな。先輩だから緊張するけど。
……あ、そうそう。俺のこと、チャラいとか軽いとか、誤解してない?
江川先輩とか、あからさまに警戒してるもんな。でも、違う。
俺は、チャラいんじゃない。必要以上の感情を持ち込まないだけだ。
生徒会はあくまで生徒会、仕事を普通にこなしていればいい。
「生徒会だから」と固くなったり、責任感を持つのも、また違うと思う。
必要なのは、自分への還元、生徒会に関しては「維持」だろう。
そうそう、俺にだって、さじ加減というものはある。まあ見てなって……
「はじめまして。垣宮1年の川島です。今日はよろしくお願いします」
「あ、はじめまして。姫宮2年の板倉です。こちらこそ、よろしくね」
どうやら、この人は固くはないらしい。友好的なオーラを感じる。
「宣伝資料は読んだのですが、いくつか質問してもいいですか?」
「いいよー、ってか、そんなに固くならなくていいのにー」
和喜は、この後、板倉さんと話し続けた。主に質問だったが。
どうやら京子は和喜に好意を抱いているようだが、和喜は気づかなかった。
まどかは隣で「なんで板倉先輩はこんなに緩いんだろう?」と考えていた。
このとき、俊樹たちが、よく話す京子を見て驚いたのは、言うまでもない。
彼は席に戻る際、一般参加人の中に変わったオーラの持ち主を見かけた。