「将来の夢は何ですか?」


そう聞かれたとき、私は迷わずこう答えます。

「いつか出先で、自分の作ったバッグを使ってくれている人に出会うことです。」



それは、子どもの頃に抱いていたような大きな夢ではないかもしれません。

けれど、私にとっては人生の軸であり、心の支えであり、日々を輝かせてくれる希望です。

ハンドメイドを始めた頃からずっと、心の奥で描き続けている「小さな奇跡のような夢」——それが、私の“将来の夢”です。

ハンドメイドとの出会い

私がハンドメイドを始めたのは、子どもの幼稚園入園がきっかけでした。

お着替え袋や絵本バッグを準備しなければならなかったのですが、当時の私は仕事や家事に追われ、心にも体にも余裕がなく、手作りすることをあきらめてしまいました。



他のママたちは器用に可愛いバッグを作っていて、「すごいなぁ」と感心するばかり。

そんな自分に、少しだけ悔しさと寂しさを感じたのを覚えています。

「私にもできるようになりたい」——そう思ったのが、すべての始まりでした。



最初は本当に小さな巾着袋から。

ミシンの扱いもおぼつかず、縫い目は曲がり、サイズもバラバラ。

それでも、「自分の手で形にできた」という喜びは何にも代えがたいものでした。

あの日のワクワク感が、今でも忘れられません。





一針一針に込める思い

ハンドメイドを続けるうちに、少しずつミシンの音が心地よくなり、布選びの時間が楽しくなっていきました。

花柄、チェック、動物柄、北欧風のデザイン——どんな布にも、作り手の想いや世界観が感じられます。



私はその中から、**「使う人の笑顔が見える布」**を選ぶようにしています。

「このバッグを持ってお出かけしたくなる」

「今日がちょっと楽しくなる」

そんな風に感じてもらえたら嬉しいのです。



たとえ会ったことのない誰かであっても、作品を通して心がつながる瞬間がある——そう信じています。



お客様との出会いが励み

ネット販売を始めた当初は、不安でいっぱいでした。

「私の作ったものなんて、誰かが欲しがってくれるのだろうか」

「もっと上手な人がたくさんいるのに」

そんな思いが頭をよぎることも多くありました。



けれど、初めて注文が入ったときの感動は、今でも鮮明に覚えています。

「購入しました。届くのが楽しみです。」

その一言に、涙が出そうになりました。

誰かの“欲しい”の中に、自分の作品が選ばれたこと。

それは、まるで“存在を認めてもらえた”ような喜びでした。



レビューやメッセージでいただく言葉は、何よりの励みになります。

「丁寧な作りで気に入りました」

「娘が毎日使っています」

「友達へのプレゼントにしました」

そんな声に支えられながら、今日もミシンの前に座ります。



「いつか、街で出会いたい」



私の将来の夢は、出先で偶然、自分のバッグを使っている方に出会うこと。

ショッピングモールでも、公園でも、電車の中でもいい。

その方が何気なく持っているバッグが、自分の作品だった——そんな瞬間を想像すると、胸が熱くなります。



その方がどんな風にバッグを使ってくれているのか、どんな服に合わせてくれているのか、

きっとその一瞬を目にしただけで、今までの苦労も疲れも吹き飛んでしまうと思います。



もしも本当にそんな出会いがあったら、きっと私は声をかけたくなってしまうでしょう。

「それ、私が作ったバッグなんです!」と。

でも、急に話しかけたらびっくりされてしまうかもしれません。

だからこそ、そっと心の中で感謝するのです。

「使ってくださってありがとうございます」と。



バッグの中に“ありがとう”を



実は私は、そんな出会いに備えて、いつも自分のマイバッグに小さなプレゼントを忍ばせています。

それは、手作りのチャームやミニ巾着、小さなメッセージカードなど。

「もしもあの夢の瞬間が訪れたら、このプレゼントをお渡ししよう」と思っているのです。



たとえそれが、まだ叶わない夢でも構いません。

そうやって想像するだけで、心があたたかくなります。

まるで未来の自分と約束しているような気持ちになるのです。



「今日も誰かのもとへ、自分の作品が届く」

その積み重ねが、いつか“街での奇跡”につながる——そう信じて、毎日ミシンを動かしています。



ハンドメイドは「心の贈り物」



私にとってハンドメイドとは、**ものを作ること以上に、“心を届けること”**です。

人の手によって生まれた温もり、布の質感、糸の走り方、ボタンのひとつにまで宿る想い。

それは機械には決して真似できない、人の心そのものだと思います。



バッグを作るとき、私はいつも想像します。

それを手に取る人がどんな毎日を送っているのか。

どんな時に使ってくれるのか。

通勤のお供かもしれないし、娘さんとのお出かけかもしれない。

お弁当を入れて職場に向かう朝、誰かとお茶を楽しむ休日——

そのどれもが、私の作品とともにある光景だと思うと、本当に幸せです。



続けることの意味



ハンドメイドの世界は、流行が早く、次々と新しいデザインや生地が登場します。

正直、迷うこともあります。

「これが本当に売れるのかな」

「私の作風は時代に合っているのかな」

そんな不安を感じる夜も少なくありません。



でも、いつも原点に立ち返ります。

“好き”という気持ちから始まったことは、きっと誰かに届く。

そう信じて、今日も一枚の布を手に取ります。



時には試作品がうまくいかず、やり直しになることも。

針を持つ手が痛くなる日も。

でも、出来上がった瞬間のあの喜びを思えば、何度でも挑戦できます。

そして、作品を通して「あなたの作品をまた買いたい」と言ってもらえるたびに、

「続けてきてよかった」と心から思うのです。

“小さな夢”が、人生を豊かにする



「出先で自分のバッグに出会う」——この夢を人に話すと、

「そんなことがあるの?」と笑われることもあります。

けれど、私はこの“ささやかな夢”こそが、自分を動かし続けてくれている原動力だと思っています。



夢は必ずしも大きくなくていい。

それが自分の心を温め、日々を前向きにしてくれるものであれば、それで十分。

私にとってハンドメイドは、まさにそんな存在です。



毎日のようにミシンを動かし、アイロンをかけ、布を裁つ。

単調に見える作業の中にも、確かな幸福が宿っています。

未来の“誰か”と静かに繋がる時間——それが、ハンドメイドの魅力なのです。



これからの目標



これから先も、私は自分のペースでハンドメイドを続けていきたいと思っています。

トレンドを追うだけではなく、自分らしさを大切に。

そして、ひとつひとつの作品に、誠実に向き合いながら。



いつか、自分のバッグを見かけたとき、

「この方の毎日に、少しでも寄り添えているんだな」と思えるような作り手でありたいです。



そのために、もっと技術を磨きたい。

新しい素材にも挑戦したい。

写真の撮り方やラッピング、販売ページの書き方にも心を込めたい。

すべては“作品を手に取ってくれる方の笑顔”のために。





おわりに 〜夢は、日常の中に〜



もしかしたら、この夢が叶う日は突然やってくるかもしれません。

休日のショッピングモールで、電車の中で、あるいは旅先のカフェで。

誰かが自分の作ったバッグを肩にかけて歩いている。

その姿を見かけた瞬間、きっと私は胸がいっぱいになるでしょう。



けれど、もしかしたらその夢が叶わなくてもいいのかもしれません。

「いつか出会いたい」と思いながら毎日を過ごすこと。

その気持ちこそが、私にとっての幸せそのものだからです。



ハンドメイドは、人生の一部。

喜びも悩みも、すべてが“ものづくりの糧”になります。

これからも一針一針に想いを込めながら、

どこかで誰かの笑顔につながる作品を作っていきたいと思います。



そして、いつかきっと。

どこかの街角で、私のバッグを持って歩く人に出会える日を夢見て——。