特別養護老人ホームの規模による違い
〜170人規模と50人規模を比べてみる〜
高齢化社会の中で、多くの方が耳にする「特別養護老人ホーム(特養)」。
入居を検討する際、「どんな施設を選べば良いのか」という点は大きな悩みです。
一口に特養といっても、実は 入居定員の規模 によって雰囲気や特徴が大きく変わります。
今回は、170人規模の大規模特養と50人規模の小規模特養を比較し、
「入居者本人」「職員」「家族」それぞれの視点から違いをまとめました。
入居者本人の視点から
大規模特養(170人規模)
仲間が多く、交流の幅が広がりやすい
行事やレクリエーションが盛んで、飽きにくい
看護師やリハビリ職など専門職が多く、医療体制も安心
その一方で、
人数が多いため「にぎやかすぎて落ち着かない」と感じる人も
職員が入れ替わりやすく、顔なじみの安心感が薄くなる
個別対応が手薄になりやすい
という面もあります。
小規模特養(50人規模)
家庭的で落ち着いた雰囲気
職員や仲間と顔なじみになりやすく、安心できる
少人数のため「自分の居場所」を作りやすい
一方で、
交流相手が少なく、人間関係が限られる
行事や活動は小規模になりがち
医療やリハビリ体制が最低限で、重度化すると転院が必要になる場合も
という点が課題です。
職員の視点から
大規模特養(170人規模)
職員数が多く、シフト調整や休み対応がしやすい
専門職が揃っていて分業が可能
研修やキャリア形成の機会が豊富
デメリットとしては、
利用者が多く、一人ひとりにじっくり関わりにくい
部署が細かく分かれ、連携が複雑になる
職員の入れ替わりが多く、人間関係が流動的
といった点が挙げられます。
小規模特養(50人規模)
利用者や家族と密接に関わりやすい
職員同士の連携が密で風通しが良い
家庭的な雰囲気を作りやすい
ただし、
人員が少ないため、欠勤時の負担が大きい
一人に求められる役割が広く、多忙になりやすい
キャリア形成の幅が狭い
という点も現場では大きな課題です。
家族の視点から
大規模特養(170人規模)
医療連携がしっかりしており、安心感がある
情報共有システムが整っていることが多い
面会時に活気があり、行事も充実
その反面、
「担当が誰か分かりにくい」と感じることがある
対応に人によるばらつきが出る場合も
施設が大きく落ち着いて話しにくい
という声もあります。
小規模特養(50人規模)
職員と家族の距離が近く、相談しやすい
入居者の生活の様子が分かりやすく、安心感がある
家庭的で面会しやすい雰囲気
一方で、
医療体制が限定的なため、重度化すると対応が難しい
行事や活動が小規模で物足りなさを感じることも
職員が少なく、忙しいときには対応が遅れる場合がある
といったデメリットがあります。
規模別メリット・デメリット総合表
視点 大規模(170人) 小規模(50人)
入居者本人 にぎやかで交流相手が多い<br>専門職が多く医療体制が安心<br>→ 個別対応が薄くなりやすい 家庭的で落ち着ける<br>顔なじみになりやすく安心<br>→ 交流や活動が限られる
職員 シフト調整がしやすい<br>研修やキャリア機会あり<br>→ 部署連携が複雑、個別ケアが難しい 利用者や家族と深く関われる<br>連携が密で家庭的な介護<br>→ 人員不足時の負担が大きい
家族 医療体制が安心<br>情報共有が整っている<br>→ 担当が見えにくい場合あり 相談しやすく家庭的<br>生活の様子が分かりやすい<br>→ 医療対応が限定的
まとめ
170人規模と50人規模の特養には、それぞれ異なる魅力と課題があります。
大規模特養は「にぎやかさ・設備・医療体制」を重視する方に向いています。
小規模特養は「家庭的な雰囲気・顔の見える関係性」を重視する方に適しています。
どちらが良いかは、入居者本人の性格や生活スタイル、家族が求める安心感によって変わります。
活発に交流を楽しみたい方には大規模、落ち着いて安心感を重視したい方には小規模が合いやすいでしょう。
特養選びは「その人の暮らしの質」を左右する大切な選択です。
ぜひ実際に見学や相談を重ね、本人と家族にとって最も心地よい施設を見つけていただければと思います。