ブエナ・ビスタの切ない想い出

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 18年前。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブが日本にもやってきた。

 

 その前にCDも映画も大ヒットで、私も連れ合いと映画を見に行きCDも手に入れていた。

 

 連れ合いは私よりも古いタイプの人間だから、映画にいたく感動して、私よりもぞっこんだっ

 

た。東京公演はオーチャードホールで、そのチケットの売出しの朝には、連れ合いは明け方か

 

ら文化村のチケット売り場に並んで何時間も粘ってようやく2枚を手に入れてくれたのだった。

 

 さて、公演は夜だったから店をやっていた私は悩みに悩んだ。二人で店を留守にして楽しみ

 

に行くのが、従業員の若い女性にどう思われるか後ろめたかったのだ。

 

 そこで連れ合いに提案した。「Cちゃん(若い女性従業員)と貴方が二人で行きなさい、私に

 

は店があるから」すると彼は「いや、それなら俺が店の留守番をするから、お前とCちゃんが行

 

くほうが良い」それから二人で散々言い争う羽目になったのだが、結局私は、彼の「お前もCち

 

ゃんも音楽をやってるんだから、俺が行くより絶対ためになる」という説得に負けてしまった。

 

 勿論コンサートは素晴らしかった。紫の上着を着たイブライム、サービス精神たっぷりに踊

 

りながら歌うオマーラ、ルベーンの個性的なピアノ、すべてのサウンドに熱があった。

 

 そして、Cちゃんと店に戻った私は、留守番をしてくれた彼の顔を見て胸をつかれた。今まで

 

見たこともない淋しい悲しげな顔をしていたのだ。心の声まで聞こえた。、、、おまえとふたりで

 

行きたかった、、、私は間違っていた。彼はコンサートに行くのが目的ではなく、あの映画を二

 

人で観て感動したときのように二人で一緒に感動したかったのだと。

 

 今でも胸がうずく想い出だ。彼の性格は今でもいつでも変わらない。自分が我慢する人なの

 

だ。自分にとって素晴らしいことは他人にとっても素晴らしいことだと信じてしまう性格で、よく

 

大切なものを人にあげてしまう。相手にとってはさほど欲しくない物だったりする事もよくある

 

のだが、、、

 

 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ。今でも胸が後悔でうずく。