歌川広重名所江戸百景・冬の部より

 

王子装束ゑの木大晦日の狐火

 

おうじしょうぞくえのきおおみそかのきつねび

 

水彩にて 模写絵師つねきち

 

 

現在の、東京都北区にある王子稲荷神社では

 

毎年、大晦日になると

 

狐装束の格好をした人々による

 

「王子狐の行列」と呼ばれる

 

イベントが開催されています。

 

これは、その行事の元となった作品といわれ

 

名所江戸百景シリーズ最後尾のものとなります。

 

 

煌めく星たちの様子を

 

元の浮世絵では「雲母摺」(きらずり)

 

という技術を使って表現しましたが

 

つねきちは細い水彩筆で

 

真珠の粒を描くように

 

小さな光を灯しています。

 

右側にある林の中には

 

王子稲荷があったと言われています。

 

 

絵の下半分には

 

榎の大木に集まる狐たち。

 

よく見ると、それぞれが

 

顔の前に小さな炎を灯しています。

 

右の方にいるグレーの群れは

 

同じく狐たちですが

 

人の格好をしているようです。

 

 

「王子のきつね火」の伝説

 

むかしむかし、海と荒川が混ざっていたころ

王子村の近くの古い大木のあたりに、たくさんの小さな火が見えました。

 

それは特に大晦日になると多く現れて

王子稲荷に向かっていきます。

 

はじめ、村人たちは怖くて遠くから見ていましたが

どうしても気になって3名を選び、その火の行列を調べに行かせました。

 

3名が草木の影に隠れながら、それらに近づいていくと

「三十三国願いを持って、王子稲荷にもうづくべし」

という声が聞こえ、その声が次々と増えていって

たくさんの狐が大木の下で装束を整え始めました。

 

そして、その中の一匹である白い狐が歩き出すと

他の狐もあとをついて行列をなし、林のある岡へと向かって行ったそうです。

 

翌年、村は豊作で争いもなく平和な年となりました。

 

村の人々は話し合って、王子稲荷のそばに白狐のお宮を建て

榎の大木には「装束の木」という名前をつけ、お守りすることになりました。

 

 

いかがでしょう。

 

神秘的でうつくしいお話ですね。

 

「三十三国願いを持って、王子稲荷にもうづくべし」とは

 

東国(関東)33国から集まってきた狐が

 

装束を整え「官位を求めて」神社に行こう

 

という意味だそうですが

 

右の狐の群れをようく見ると

 

(ちょっと、ここでは分かりづらいかもしれません)

 

人の格好をした狐達はみなこちらを向いているので

 

神社に向かうというより、帰りなのではないか

 

という説もあります。

 

また、木の周囲に集まっている狐が

 

どことなく、何か企んでいるようにも見え・・・

 

いずれにしても想像力を掻き立てられる

 

不思議な魅力を持った構図ですね。

 

母は、この絵を描いている時のつねきちも

 

とても神秘的な姿に感じました。

 

 

 

 

関連ものですが、王子稲荷神社を描いた作品は、こちらになります↓

 

 

 

 

 

本日もご覧いただき、ありがとうございます。

 

 

 

模写絵師つねきち全ての作品は、こちらから