駿州大野新田
すんしゅうおおのしんでん
静岡県吉原市の芦が茂る湿地帯。
刈った芦を背にのせた牛と農民達が歩くのは浮島ケ原。
和歌などにもよく出てくる風情のある場所です。
どっしりとした姿の牛と
紺色の装束を着た人々の姿
みな同じ姿勢で並んでいるのは、北斎の調律がなせる技。
全体をスタイリッシュに引き締めています。
レベルの高い構図の中で
自然な筆を運ぶ、つねきちぼかし。
困ったような表情の男性ですが、この中では一番のイケメンです。
牛の背には乾いた芦がありますが
人が背負うのは刈ったばかりのもの。
質の良い芦はすだれ(葦簀=ヨシズ)にしたり
民家の屋根(茅葺き)に使われたりしたそうです。
思わず農民達が立ち止まって見とれてしまった富士。
裾野にかかる雲の長くたなびきたるさま。
この絵は早朝という説と夕暮れという説がありますが、
どちらだったのでしょう。
時空を超えた絵師器(えしうつわ)つねきちが描いたのは住んだ青
だとすると、早朝なのではないかと思うのです。
白鷺が飛び立つ姿も朝の景色に感じます。
白鳥は哀しからずや
空の青 海のあをにも
染まずただよふ
という若山牧水の歌を思い出します。
海ではありませんが・・・
ズームしてみますと
白鷺の顔がやたら童顔です。
哀しからずや、ではなく何だか楽しそう。
こんなところがほのぼのと救われる
つねきちタッチといえるのでしょう。
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