急にスケジュールが空いた。
天候不良で乗るはずだった飛行機は欠航。こういうとき、日本という国は海外に出ることは出来なくなる。
仕方なく出発は延期となり、体を休めるようにとの指示に従い、部屋に戻ってきた。
いつもながら、生活感のない部屋は、ひんやりとしている。普通なら、寂しいとか、空虚だとか感じるのだろうが、この空間が自分には1番馴染むように思う。
シャツの第2ぼたんまでをくつろげて、リビングのソファにもたれる。知らない人が見れば、この男もこんなふうに姿勢をくすわすこともあるのかと驚かれることだろう。
ガラステーブルに置いたスマホから、メールの着信音。
「お疲れ様です。渡米は塩基になったそうですね?
社さんからご連絡いただきまして、ラブミーブの活動として、敦賀さんの食事管理を仰せつかりました。お返事お待ちします。」
ずっと密かに思いを寄せる少女からのシンプルなメール。そんなシンプルな内容にも、どこか気はずかしいような、そわそわする感覚に、つい失笑してしまう。そして慌てて咳払い。
「やぁ、俺だけど……」
ワンコールで通話が始まった彼女に、できるだけいつも通りにクールで穏やかな敦賀蓮を演じてみる。
「あ、敦賀さん、お疲れ様てです。お電話いただけるなんておもってなくて。メールご迷惑じゃなかったですか?」
「大丈夫だよ。社さんにはなんて頼まれたの?」
「はい、敦賀さんのスケジュールがぽっかり空いたので部屋に戻らせた。頬っておくと次の仕事までの食生活が不安極まりないので、しっかり混んりして欲しいとのことでした。」
あの人らしいな、いつも俺のいちばん欲しいものを用意してくれる。俺は、社さんにも、この子にも甘えすぎだな……
「なら、この前見つけた小さなレストランがあるんだ。そこのハンバーグが絶品らしいんだけど、おともしてくれるかな?」
「……、」
受話器の向こうではっと息を呑む音が聞こえる。あれ、まずったか?
彼女がハンバーグを大好きなことは子供の頃から知っている。だから、こんな機会がある時の為に、それとなくリサーチを怠らずにいた。そして、やっと巡ったチャンスとばかりに持ち出したのに、だめなのか?
「あ、あの……」
なんとも申し訳なさそうな声で彼女が続ける
「私のための食事ではなくて、敦賀さんの食事管理なので……、その……」
「今日はハンバーグが食べたいんだよ。君なら付き合ってくれると思ったんだけど……」
5日を落としてがっかりした雰囲気を演じてみる。
「えづっ、いえ、あの……
私ごときでよければ、お供させていただきます!!」
「お供は君がいいんだ。」
(不肖、最上キョーコ、およばずながら、精一杯お供を努めさせていただきます!!)
電話越しで姿は見えてないけれど、背筋をピンと伸ばしてカチコチに固まっているであろう、彼女の姿は想定内だ。
「今とこにいる?」
「はい、だるまやです。」
「わかった、じゃぁ、30分で迎えに行くよ。少し待ってて?」
思いもよらずぽっかり空いた時間に舞い込んだ幸運。大好物を目の前にした彼女を、その幸せいっぱいの空間ごと独占出来る奇跡。
まだ、この胸の中に宿った想いを伝えることは出来ないけれど、この幸せをしっかり感じて、いいよね?
天候不良で乗るはずだった飛行機は欠航。こういうとき、日本という国は海外に出ることは出来なくなる。
仕方なく出発は延期となり、体を休めるようにとの指示に従い、部屋に戻ってきた。
いつもながら、生活感のない部屋は、ひんやりとしている。普通なら、寂しいとか、空虚だとか感じるのだろうが、この空間が自分には1番馴染むように思う。
シャツの第2ぼたんまでをくつろげて、リビングのソファにもたれる。知らない人が見れば、この男もこんなふうに姿勢をくすわすこともあるのかと驚かれることだろう。
ガラステーブルに置いたスマホから、メールの着信音。
「お疲れ様です。渡米は塩基になったそうですね?
社さんからご連絡いただきまして、ラブミーブの活動として、敦賀さんの食事管理を仰せつかりました。お返事お待ちします。」
ずっと密かに思いを寄せる少女からのシンプルなメール。そんなシンプルな内容にも、どこか気はずかしいような、そわそわする感覚に、つい失笑してしまう。そして慌てて咳払い。
「やぁ、俺だけど……」
ワンコールで通話が始まった彼女に、できるだけいつも通りにクールで穏やかな敦賀蓮を演じてみる。
「あ、敦賀さん、お疲れ様てです。お電話いただけるなんておもってなくて。メールご迷惑じゃなかったですか?」
「大丈夫だよ。社さんにはなんて頼まれたの?」
「はい、敦賀さんのスケジュールがぽっかり空いたので部屋に戻らせた。頬っておくと次の仕事までの食生活が不安極まりないので、しっかり混んりして欲しいとのことでした。」
あの人らしいな、いつも俺のいちばん欲しいものを用意してくれる。俺は、社さんにも、この子にも甘えすぎだな……
「なら、この前見つけた小さなレストランがあるんだ。そこのハンバーグが絶品らしいんだけど、おともしてくれるかな?」
「……、」
受話器の向こうではっと息を呑む音が聞こえる。あれ、まずったか?
彼女がハンバーグを大好きなことは子供の頃から知っている。だから、こんな機会がある時の為に、それとなくリサーチを怠らずにいた。そして、やっと巡ったチャンスとばかりに持ち出したのに、だめなのか?
「あ、あの……」
なんとも申し訳なさそうな声で彼女が続ける
「私のための食事ではなくて、敦賀さんの食事管理なので……、その……」
「今日はハンバーグが食べたいんだよ。君なら付き合ってくれると思ったんだけど……」
5日を落としてがっかりした雰囲気を演じてみる。
「えづっ、いえ、あの……
私ごときでよければ、お供させていただきます!!」
「お供は君がいいんだ。」
(不肖、最上キョーコ、およばずながら、精一杯お供を努めさせていただきます!!)
電話越しで姿は見えてないけれど、背筋をピンと伸ばしてカチコチに固まっているであろう、彼女の姿は想定内だ。
「今とこにいる?」
「はい、だるまやです。」
「わかった、じゃぁ、30分で迎えに行くよ。少し待ってて?」
思いもよらずぽっかり空いた時間に舞い込んだ幸運。大好物を目の前にした彼女を、その幸せいっぱいの空間ごと独占出来る奇跡。
まだ、この胸の中に宿った想いを伝えることは出来ないけれど、この幸せをしっかり感じて、いいよね?