固まる蓮とそれに驚いて一緒な固まる社。なんとも引用し難い空気な中、申し訳なさそうに静かに、蓮の携帯が震えだした。

胸ポケットから伝わる振動に蓮は我に返って携帯を取り出す。その動作に社も呪縛から解かれる。ディスプレイに表示さらる『社長』の文字に、蓮は盛大にため息を吐く。俯いて目を閉じて、ブルブル震えて急かす携帯の発話ボタンを押して受話部を耳に当てようと近づけた時

「おせぇじゃねぇか、蓮❣」

耳に近づけなくてもしっかり聞き取れる大きな声は少し怒気を孕んでいた。

「テレビ観たか?」

と続くセリフ。

「‥はい。」

「とぉいぅこった、説明かろや。」

「どうもこうも、俺自身さっぱり解らないんです‥」

「ほぉ?身に覚えがないと?」

「はい」

「全くか?」

「はい‥全く。」

「‥、まぁいぃ。調べればすぐに裏は取れる。それより、だ‥。」

「はい」

「最上くんはどうした?」

「どうしたって‥、なんですか?」

ローリーがなぜそんな事を聞くのか、蓮には検討もつかなかった。

「お前のスキャンダルの相手は最上くんじゃないだろう?」

「‥はい」

昨日はラブミー部の依頼で食事を作りにこさせてあったんだろ?」

「‥はい。」

「お前は帰らなかった‥」

「‥はい‥」

「ちゃんと謝ったのか?」

「いえ、電話はしたんですが留守電になっていて、駄文学校だも思いますから後からまた連絡しようと思ってます。」

「間に合うといいな。」

「えっ?」

「あや、こっちのこった。じゃぁな、しっかり稼いでくれよ、看板俳優どの。」

それだけいうとローリーは電話を切った。

「えっ、あの、社長?」

蓮は慌てて電話に話しかけるが無機質な電子音だけが借り換えされていた。

蓮は諦めて携帯を耳から外してじっとながめた。ローリーは言った『間に合うといいな。』という言葉の意味がよくわからない。だが、社の焦った態度とローリーからの直電という行為で、時分がなにか取り返しのつかないかもしれない危機的蒸気にある事は解った。

(最上さん、声がききたい‥)

蓮はキョーコに電話をかける。何度かの無機質な電子音の後にまた留守録に切り替わってしまった。

蓮はため息を‥はいてメッセージを残さずに電話を切った。

「最上さん、‥」

小さな呟きはキョーコに届く事はない。