sideキョ-コ

そこは森の奥にある瓦。夏の日差しにキラキラと輝きながら流れる川。その瓦にツイン手-ルの少女と金髪碧眼の少年がいる。
ツインテ-ルの少女はその瞳に涙をいっぱい浮かべて問いかける。
「コ-ン、妖精の国に帰っちゃうの?また逢える?」
「....もう逢えない。」
金髪碧眼の少年は俯いて小さく呟く。
「あっ!じゃ、じゃあ、お手紙書くっ!」
少女は必死にいい募る。
「住む世界が違うから、…きっと、俺のとこまで届かない...」少年は辛そうに目をそらしてまっすぐ少女を見ようとしない。
「そっ、そんなのやだ!せっかくお友だちになれたのに。コ-ン....いかないで」
少女は大粒の涙をポロポロ溢して泣きじゃくる。
瓦のし-んがフェイドアうとしてゆっくり意識が浮上する。あぁ、私はまた夢を見ていたんだ。「コ-ン」
その名前を口に乗せると意識が現実胃へと引き戻されていく。頬に冷たいものを感じてなんとなく弖を当てると濡れている。目を開けてぼんやりと滲む視界でそれが涙だと気づいた。
私、泣いてたんだ。
無意識に敦賀さんの温もりを探す。夢から覚めたとき、必ず敦賀さんがいてくれて、私を包んでくれる。その優しい腕で、安心できる香りで。そして、その言葉で。当たり前のようにそこにある温もり。それを無意識に求めてしまう。そして、異変に気づいた。

敦賀さんがいない。

「うそ....」

小さく声が漏れた。私は慌てて体をお越し、キョロキョロと部屋のなかを見回して、やはり敦賀さんがいないことを確認する。一気に不安が押し寄せる。
「敦賀さん?」
そう呼び掛けても返事がかえって来ることはない。
「敦賀さん、どこですか?」
いないとわかっていてもつい呼び掛けてしまう。信徒静まり帰った寝室。私は起き上がってないとガウンを羽織、水を飲むためにキッチンへ以降と部屋を出た。

廊下に出ると人の声が聞こえてきた。男性の話し声。ひとつは....社長?そしてもうひとつは....敦賀さんだ!!

私は敦賀さんの声がだとわかった瞬間嬉しくなって駆け出した。廊下を走って階段をかけ降り、リビングに向かう扉にむかった。扉の前で弾んでしまった呼吸を整えてそっと扉を開けようとしたとき二人の会話が耳に飛び込んできた。

「俺にはもう限界です、社長。」
「どうした、連。この前自分が彼女を支えるといったばかりじゃねえか。」
「それはそうなんですが、俺にはもう耐えられません。」
「ほぉ、そんなに早くけつわっていいのか?」
「そ、それは....でも、これ以上彼女を見ているのは辛すぎます。」
「まあ、無理強いをすることはできんがな。後悔しねえか?」
「はい。これ以上彼女と一緒にいると、俺がどうにかなってしまいそうです。」
「そうか、わかった。これからのことは考えよう。しかし、お前は弱いな。最上くんの強さの本の欠片でもいいからもらえればいいんだろうが....」
「....すいません」
「まぁ、仕方ねえさ。」

敦賀さん、私のことが迷惑だったんだ。優しい人だから直接私を拒絶することができなくて社長に相談してるんだ。私、そんなことに全然気づきもしないでどんどん敦賀さんに迷惑をかけていた。それどころかどんどん甘えてきっと追い詰めていたんだ。私は私のことだけでいっぱいいっぱいで、敦賀さんの大変さとか本音とかに全く気づけてなかった。私がそばにいると敦賀さんには負担にしかならないんだ.....

ツインテ-ルの少女が『お母さん』と読んだ細身の女性、『しょ-ちゃん』と呼んだ金髪の青年、『コ-ン』と呼んだ金髪碧眼の少年。みんな少女の前から去っていった。その少女はたぶん子供の頃の私。そして今、敦賀さんが私の前から立ち去ろうとしている。また、私が大事だと思う人が綿祖も背を向けようとしている。
いやだ、もうおいていかれるのはいやだ。敦賀さん、私をおいていかないで!

私はリビングへの扉のノブに弖をかけて扉を開こうとした。でも、体に力がうまく入らない。そして目の前が暗くなっていく。急激に司会が狭くなって、音あが遠退いていく。足に力が入らなくなってからだが崩れていこうとするのをどう頑張ってもささえることができなくなってくる。

ここで私の記憶は途絶えた。