sideキョーコ
夢を見た。多分小学生くらいの私がいた。ツインテールにミニスカート、赤い靴を履いていた。私は一生懸命走っていた。一生懸命明るい場所に向かって走っていた。明るい場所は旅館の玄関だ。もう少しでたどり着くと思った時、中から人が出てきた。すらっと背の高い、髪の長い女の人と、綺麗に着物を着こなした女性。和食の板前さんの格好をした男性の三人だ。着物ん女性が走ってくる私に気づいて『あら、キョーコちゃん!』と笑顔で呼びかけてくれた。すらっと背の高いジョセは私にちらっと視線だけ投げて、どんどん前に歩いて行った。着物の女性がその人に何か言っているようだが私には聞こえない。
私は声を限りにさけんだ。「おかあさん!!」
女の人はもう私を見ることもなくそのまま歩いて去っていく。
「おかあさん、いかないでっ!!」
一生懸命叫びながら女性の後を追いかけるが、その女性は振り返ることはない。
私は小石に躓いて倒れてしまう。どうしようもなく流れる涙を気にすることもなく「おかあさん!おかあさん!!」と叫ぶ私。着物の女性と板前さんの男性が私に近寄って抱き起こしてくれる。『おかあさん』の姿はもう見えない。
着物の女性と板前さんは何も言わずに旅館の中へ入っていった。旅館の前で立ち尽くす私。
そこで目が覚めた。枕が冷たいので何かと思ったら自分の顔が涙で濡れていることに気づいた。
『私…泣いてたんだ』
見たばかりの夢を思い出すと(泣)ながら必死に母を呼ぶ私と、ずんずん遠ざかる背中が浮かぶ。また涙が溢れてきそうになる。無意識に握りしめた布。その布から安心出来る香りが鼻をくすぐる。
…敦賀さんの香り…
夢と現の狭間で揺れる意識の中で私は敦賀さんに満たされる。この人の存在が私の何よりの支えで、この人がいるから私は今を乗り越える事が出来るんだ。
一度全てを投げ出してしまった私。でも、その全てが私を作る要素で、私が私であるために必
夢を見た。多分小学生くらいの私がいた。ツインテールにミニスカート、赤い靴を履いていた。私は一生懸命走っていた。一生懸命明るい場所に向かって走っていた。明るい場所は旅館の玄関だ。もう少しでたどり着くと思った時、中から人が出てきた。すらっと背の高い、髪の長い女の人と、綺麗に着物を着こなした女性。和食の板前さんの格好をした男性の三人だ。着物ん女性が走ってくる私に気づいて『あら、キョーコちゃん!』と笑顔で呼びかけてくれた。すらっと背の高いジョセは私にちらっと視線だけ投げて、どんどん前に歩いて行った。着物の女性がその人に何か言っているようだが私には聞こえない。
私は声を限りにさけんだ。「おかあさん!!」
女の人はもう私を見ることもなくそのまま歩いて去っていく。
「おかあさん、いかないでっ!!」
一生懸命叫びながら女性の後を追いかけるが、その女性は振り返ることはない。
私は小石に躓いて倒れてしまう。どうしようもなく流れる涙を気にすることもなく「おかあさん!おかあさん!!」と叫ぶ私。着物の女性と板前さんの男性が私に近寄って抱き起こしてくれる。『おかあさん』の姿はもう見えない。
着物の女性と板前さんは何も言わずに旅館の中へ入っていった。旅館の前で立ち尽くす私。
そこで目が覚めた。枕が冷たいので何かと思ったら自分の顔が涙で濡れていることに気づいた。
『私…泣いてたんだ』
見たばかりの夢を思い出すと(泣)ながら必死に母を呼ぶ私と、ずんずん遠ざかる背中が浮かぶ。また涙が溢れてきそうになる。無意識に握りしめた布。その布から安心出来る香りが鼻をくすぐる。
…敦賀さんの香り…
夢と現の狭間で揺れる意識の中で私は敦賀さんに満たされる。この人の存在が私の何よりの支えで、この人がいるから私は今を乗り越える事が出来るんだ。
一度全てを投げ出してしまった私。でも、その全てが私を作る要素で、私が私であるために必