サイド蓮
その時の京子ちゃんはキラキラ輝いて、眩しくて直視できなかった。
それに引き替え俺は…。記憶を失う前、俺はすでに本来の姿を偽っていた。髪の色と瞳の色を変え、名前を偽っていたここにいた。その事さえも忘れてしまった。そして今も偽り続けている。俺の隣に座るこの眩しい存在にさえその事を打ち明けていない。いや、眩しいからこそ打ち明けられないのか…。俺に対して全幅の信頼を持ってくれている京子ちゃん。俺は彼女に慕ってもらえるほどの人間ではないという事を彼女の存在が見せつけてくれる。彼女にそんなつもりはなく、ただ全てを受け入れてあるがままに過ごしているだけなのに、それが出来ないでいる俺が勝手に卑屈になって、小さく女々しくなっている。
京子ちゃんは前に進もうとしている。今の状況に積極的に取り組もうとしている。俺はこのままこの状況を利用しようとしている。真逆の関わり方をしている京子ちゃんと俺…。俺には京子ちゃんの真似は出来ない。京子ちゃんのように強くなれない。多分、これが俺の限界なのだろう。
「社長、俺は無理です。」
「ん?蓮、どうした?」
「俺は…、過去に向き合う事は出来ません。」「…そうか。」
社長はくわえていた葉巻を掴んで灰皿に押し付けながらゆっくりと煙を吐き出す。
「ま、今すぐにどうこうなるもんじゃねえからな。その時でいいんじゃねえか?」
「…はい。」
社長の反応が思いの外穏やかだった事に驚いた。もっと責められたり呆れられたりするのではないかと思っていたのに。
「二人いっぺんに厄介な作業をするよりもどちらか一人ずつの方が対応しやすいだろうしな。まぁ、まずは最上くんが記憶を取り戻すためのサポートをしてやるんだな。」「はい。」
「つ、敦賀さん。ご迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします。」
「いや、俺こそ、なんの役にも立たないとは思うけど、よろしく頼むよ。」
京子ちゃんの満面の笑みは今の俺には眩しすぎる。だが、今の俺はこの眩しい存在に照らされて、他人からは月のようにきらきら輝いて見えるのかもしれない。自分自身に光を持たない月。時と場所、見方によってその姿を変える不実な月。今の俺はそんな存在だ。俺の太陽はどこまでも強く明るくて眩しい。だが、その光は暖かく柔らかく、俺を照らしながら包んでくれる。俺はこの太陽に照らされていたいと思う。今の俺はそうする事しかできないのだ。自分の弱さに苦笑いした。
その時の京子ちゃんはキラキラ輝いて、眩しくて直視できなかった。
それに引き替え俺は…。記憶を失う前、俺はすでに本来の姿を偽っていた。髪の色と瞳の色を変え、名前を偽っていたここにいた。その事さえも忘れてしまった。そして今も偽り続けている。俺の隣に座るこの眩しい存在にさえその事を打ち明けていない。いや、眩しいからこそ打ち明けられないのか…。俺に対して全幅の信頼を持ってくれている京子ちゃん。俺は彼女に慕ってもらえるほどの人間ではないという事を彼女の存在が見せつけてくれる。彼女にそんなつもりはなく、ただ全てを受け入れてあるがままに過ごしているだけなのに、それが出来ないでいる俺が勝手に卑屈になって、小さく女々しくなっている。
京子ちゃんは前に進もうとしている。今の状況に積極的に取り組もうとしている。俺はこのままこの状況を利用しようとしている。真逆の関わり方をしている京子ちゃんと俺…。俺には京子ちゃんの真似は出来ない。京子ちゃんのように強くなれない。多分、これが俺の限界なのだろう。
「社長、俺は無理です。」
「ん?蓮、どうした?」
「俺は…、過去に向き合う事は出来ません。」「…そうか。」
社長はくわえていた葉巻を掴んで灰皿に押し付けながらゆっくりと煙を吐き出す。
「ま、今すぐにどうこうなるもんじゃねえからな。その時でいいんじゃねえか?」
「…はい。」
社長の反応が思いの外穏やかだった事に驚いた。もっと責められたり呆れられたりするのではないかと思っていたのに。
「二人いっぺんに厄介な作業をするよりもどちらか一人ずつの方が対応しやすいだろうしな。まぁ、まずは最上くんが記憶を取り戻すためのサポートをしてやるんだな。」「はい。」
「つ、敦賀さん。ご迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします。」
「いや、俺こそ、なんの役にも立たないとは思うけど、よろしく頼むよ。」
京子ちゃんの満面の笑みは今の俺には眩しすぎる。だが、今の俺はこの眩しい存在に照らされて、他人からは月のようにきらきら輝いて見えるのかもしれない。自分自身に光を持たない月。時と場所、見方によってその姿を変える不実な月。今の俺はそんな存在だ。俺の太陽はどこまでも強く明るくて眩しい。だが、その光は暖かく柔らかく、俺を照らしながら包んでくれる。俺はこの太陽に照らされていたいと思う。今の俺はそうする事しかできないのだ。自分の弱さに苦笑いした。