ドラマで草野球をする青年の役を受けた。貴島君と俺、ブリッジロックの三人に何人かの若手俳優と新人の役者達。ヒロインは最上さんで、女性陣も大原さんにラブミー部の琴南さんと雨宮さん、若手の女優さん達となかなか豪華メンバーで固められている。ドラマの話は子供の頃野球少年だった俺と貴島君とが草野球のチームを作ろうと人を集め、試合が出来るまでという話。大原さんや琴南さんはそんな俺達を応援してくれる。小さなすれ違いやもめ事などを越えてチームをまとめていくのだが、ヒロインである最上さんは大の野球嫌い。琴南さん達に連れて来られていた最上さんに俺が一目惚れして、必死にアプローチをするが全拒否され続ける。少しずつ増える部員とのやり取りや琴南さん達との関わりの中で頑なに野球を嫌っていた最上さんが徐々に心を開いてくれて、最後には俺の気持ちも彼女のに届くという話だ。俺はこのドラマの撮影が進む中で実際に最上さんの頑ななまでの恋愛拒否が少しでも緩和されてくれればいいと願わずにはいられなかった。
撮影前、肩慣らしにと貴島君と二人でキャッチボールを始めると他の男性陣も一緒になってキャッチボールを始める。新人女優達は周りできゃいきゃいと騒いでいる。同じ業界の者同士といった感じではなく、野球部員と取り巻きぃズといった感じだ。貴島君やブリッジのみんなはご機嫌で、新人俳優達も格好いいところを見せようと気合いが入っている。俺はと言えば、『そういえば、キャッチボールとか野球ってした事あったっけ?』などと考えながら軽くウォーミングアップをしている程度だ。

「皆さん、お茶が入りましたよ。少し休憩したら撮影に入るそうなので、こちらでどうぞ。」と最上さんの通る声に皆そちらに向かう。冬に向かう季節、もう既に肌寒くなってきているので、温かい紅茶がありがたく感じる。俺は最上さんの手から紅茶の入った紙コップを受け取り、一息つく。

「敦賀さんは野球されてたんですか?」
「いや、これが初めてだと思うよ。」
「何をしても絵になりますね?」
「そう?そうでもないよ?」
「だって、キャッチボールしている姿が凄く格好いいですよ?」
「ありがとう。やってみると楽しいもんだね?」
「そうなんですね?」
「最上さんもやってみない?」
「私…ですか?」
「うん。また休憩の時にでも」
「…はい!」

俺がキャッチボールしたいは『気持ち』なんだけど、ね?