「蓮様ぁっ!」

満面の笑顔で駆けてくる金髪の彼女。その姿は子供から少女へと成長している。『女の子は速いよ…』と、社さんにかつて言われた言葉が蘇る。

「マリアちゃん、お誕生日おめでとう。そしてメリークリスマス」
屈んでその小さな体を受け止めて抱き上げる。「蓮様ありがとう。今年は間に合わないかと諦めてましたのよ?」
「そうなの?これは細やかなプレゼントだよ。」
そういうと胸ポケットに忍ばせておいた小さな包みを少女に手渡す。
「わっ!ありがとう蓮様。」
マリアちゃんをそっと降ろして視線を上げれば俺達のやり取りを眺めてニコニコと微笑む少女の姿が視界に入った。このパーティーの主催と料理の手配を請け負っていた彼女はついさっきまで厨房に居たらしくコック姿でマリアちゃんと二人で会場の来客に挨拶をしてまわっていたらしい。

「やぁ、最上さん。今年も盛大だね?」
「はい、お陰様で素敵な夜を過ごさせてあただいてます。」
そういうとにっこり笑う笑顔がとても眩しい。

「お祖父様、蓮様からプレゼントをいただきましたのよっ!」マリアちゃんは社長のもとへ駆け出した。その姿を見送りながら最上さんは微笑ましいとばかりに笑顔を浮かべる。
「敦賀さん、まだお食事されてませんよね。せっかくですから召し上がりませんか?」
「あぁ、うん、そうだね。最上さんの料理だから是非とも食べておかないと、ね?」
「私、適当に見繕って持ってきますね?」
「いや、最上さんもまだ食べてないだろう?出来れば二人分取って一緒に食べないか?」
「えっ、そうですね。じゃあ、社さんの分も取り分けましょう。」
「了解。じゃあ、俺は皿を持つよ。最上さんは盛り付けてくれるかな?」

そして二人で料理が並ぶところに行き、俺は大きめのトレイを取り、最上さんの後ろに付いてあるく。最上さんはお皿に色々の料理を手早く綺麗に盛り付けて俺が持っているトレイに並べていく。俺は彼女の手元と横顔を交互に見ながらなんとなく幸せな気分になっていく。

「敦賀さん、嫌いなものはありませんよね?あっさりしたものと食べやすいものを中心に取りますね。」
「…あぁ、ありがとう。」
返事が少しだけ遅れたのは彼女の横顔に見惚れていたから。これは内緒だけど。

俺の食事量を鑑みて少なめに彩りよく盛り付けられた料理を持って、俺達はスタンディングテーブルについた。