撮影中****
「上野くんがね、『まゆみちゃんは絶対に仲間に引き入れる!』って言って、あてにもならないのにそのデスクと端末、それから最低限必要な物を取り揃えたのよ。」
ひとみはモニターとにらめっこしながらそう呟く。
「妬けちゃうわよ。そんなに信頼されて望まれて…。私なんて押し掛けクルーなんだから…。」
「えっ?」
まゆみも押し付けられた書類の山からテンプレートに入力処理をする手は止めずに聞き返す。
「佐伯くんが、ぁ、社長がね…、人見知りで人嫌いなクセに温厚紳士でしょ。だから社員もかなり限定されてるんだって上野くん、ぁ、副社長が言ってたわ。起業って言ってもまだ合資レベルだから役員や社員は必要ないんだって。」
「へぇ、そうなんだ。」
まゆみはあまり聞きなれない言葉に相づちをうつのがやっとだ。
「でも、リビングを応接室にしているから接客は必要でしょ?それに事務処理や経理に長けたスタッフは育てるのが大変。だから私は自分を売り込んだの。」
「すごいなぁ、ひとみちゃんにはいつも驚かされちゃう。」
「私は、やりたい事があって、今やらなきゃならない事が解るだけ。そのために出来るだけの努力をしたらきっと道が拓けるはずよ。拓けなくても費やした努力と時間は糧になるはずだから…。」
どこまでも前向きで強いひとみの言葉にまゆみは感心し、同時に自分にはひとみのようにしっかりとした考え方がない事に落胆する。
「まゆみちゃんはね、これから色々みつけていかなきゃいけない人だから、その第一歩にここは最適なんだって。」
「えっ?」
今自分が落胆している理由と気持ちを見透かしたようなひとみの言葉にまゆみはハッとして顔を上げ、ひとみを見つめた。ひとみはばつ悪そうに曖昧に微笑んで「…って、上野くんが…」と付け加える。
「上野くん…が?」
「そうよ。」と言ってぺろっと舌をだした。
まゆみは少し呆けていたが、なんとなく心が軽くなって笑いが込み上げてくる。
クスっと息が漏れてしまえばもう止まらない。ひとみも一緒になって笑う。二人の楽しげな笑い声が部屋に満ちる。一頻り笑って落ち着き始めたタイミングで部屋のドアがノックされ、上野が顔を覗かせた。
「いいよね、女子の可愛い笑い声は。偏屈社長が『悪口でも言われてるんじゃないか?』って顔でそわそわしてるからリビングで休憩しようよ。まゆみちゃん、お茶淹れてくんないかな?」
女子二人は顔を見合わせ、また笑った。
「上野くんがね、『まゆみちゃんは絶対に仲間に引き入れる!』って言って、あてにもならないのにそのデスクと端末、それから最低限必要な物を取り揃えたのよ。」
ひとみはモニターとにらめっこしながらそう呟く。
「妬けちゃうわよ。そんなに信頼されて望まれて…。私なんて押し掛けクルーなんだから…。」
「えっ?」
まゆみも押し付けられた書類の山からテンプレートに入力処理をする手は止めずに聞き返す。
「佐伯くんが、ぁ、社長がね…、人見知りで人嫌いなクセに温厚紳士でしょ。だから社員もかなり限定されてるんだって上野くん、ぁ、副社長が言ってたわ。起業って言ってもまだ合資レベルだから役員や社員は必要ないんだって。」
「へぇ、そうなんだ。」
まゆみはあまり聞きなれない言葉に相づちをうつのがやっとだ。
「でも、リビングを応接室にしているから接客は必要でしょ?それに事務処理や経理に長けたスタッフは育てるのが大変。だから私は自分を売り込んだの。」
「すごいなぁ、ひとみちゃんにはいつも驚かされちゃう。」
「私は、やりたい事があって、今やらなきゃならない事が解るだけ。そのために出来るだけの努力をしたらきっと道が拓けるはずよ。拓けなくても費やした努力と時間は糧になるはずだから…。」
どこまでも前向きで強いひとみの言葉にまゆみは感心し、同時に自分にはひとみのようにしっかりとした考え方がない事に落胆する。
「まゆみちゃんはね、これから色々みつけていかなきゃいけない人だから、その第一歩にここは最適なんだって。」
「えっ?」
今自分が落胆している理由と気持ちを見透かしたようなひとみの言葉にまゆみはハッとして顔を上げ、ひとみを見つめた。ひとみはばつ悪そうに曖昧に微笑んで「…って、上野くんが…」と付け加える。
「上野くん…が?」
「そうよ。」と言ってぺろっと舌をだした。
まゆみは少し呆けていたが、なんとなく心が軽くなって笑いが込み上げてくる。
クスっと息が漏れてしまえばもう止まらない。ひとみも一緒になって笑う。二人の楽しげな笑い声が部屋に満ちる。一頻り笑って落ち着き始めたタイミングで部屋のドアがノックされ、上野が顔を覗かせた。
「いいよね、女子の可愛い笑い声は。偏屈社長が『悪口でも言われてるんじゃないか?』って顔でそわそわしてるからリビングで休憩しようよ。まゆみちゃん、お茶淹れてくんないかな?」
女子二人は顔を見合わせ、また笑った。