次に目が醒めたのはやはり痛みのためだった。
「敦賀さん、痛みますか?」
「うん、少し…」実際はかなり痛むがそうは言えない。
「痛み止め使える時間になりましたから看護師さんに言いますね。」とナースコールを押す。看護師さん側も今日の状況を解っているのですぐに痛み止めの点滴を持って来てくれた。ついでに抗生物質の時間ですからと袋を二つ吊り下げて行った。
痛み止めは速効性があって痛みは急速に退いていく。心配そうに覗き込む最上さんを安心させたくて少し笑って見せる。最上さんは「無理しないでください」と少し怒った顔で、でも、頬が少し赤いような気がする。
「そ、そうだ、お水のみますか?」と少し慌てて視線を逸らす彼女はとても可愛い。「いただくよ」と答えるとすっと差し込まれたストローからひんやりと美味しい水を口に含む。不用意に口の端から少し溢してしまったら、事も無げに持っていたタオルで口許を拭ってくれた。
「この部屋、空調が整っているから乾燥しますからね。」とひんやりしたタオルでまた口許を拭ってくれる最上さんは本当の天使に見えた。
「お願い…が、あるん、だけど…」
「はい?なんですか?」
「手を…」
点滴の入っていない方の手を最上さんの方に差し出した。最上さんは俺の手をそっと取ると「夜は冷えますからね。」と優しく毛布の中に戻そうとする。俺は彼女の手を握って告げた。
「手を、握ってて、くれないか…?」
「敦賀さん、なんだか子供みたい」と最上さんはクスクス笑って、俺の手をベッドに置き去りにして離れていった。俺は精一杯の願いが叶わなかった事に気を落として小さくため息をついて目を閉じた。
そんな俺の右手に戻ってきた温もり。俺は驚いて目を開けた。すると俺の右手は最上さんの両手に包まれていた。「えっ?」と最上さんの顔を見ると「だって、中腰のままじゃずっと握っていられないじゃないですか。」と頬を染めてそっぽを向いた。「ありがとう、うれしいよ。」俺はその言葉をいうのが精一杯で、薬の効能でまた眠りに落ちたようだ。
次に目覚めたのは窓から差し込む朝日のせいだった。俺の右手は最上さんの両手に包まれたままだった。最上さんはベッドに突っ伏すように眠っていた。俺の右手は容易に彼女の拘束を逃れ、彼女の栗色の髪を撫でる事が出来た。
最上さんが目を醒ました。
「ありがとうキョーコちゃん」
たまには病気に負けるのもいいかもしれないと思ったのは絶対に秘密。
End
「敦賀さん、痛みますか?」
「うん、少し…」実際はかなり痛むがそうは言えない。
「痛み止め使える時間になりましたから看護師さんに言いますね。」とナースコールを押す。看護師さん側も今日の状況を解っているのですぐに痛み止めの点滴を持って来てくれた。ついでに抗生物質の時間ですからと袋を二つ吊り下げて行った。
痛み止めは速効性があって痛みは急速に退いていく。心配そうに覗き込む最上さんを安心させたくて少し笑って見せる。最上さんは「無理しないでください」と少し怒った顔で、でも、頬が少し赤いような気がする。
「そ、そうだ、お水のみますか?」と少し慌てて視線を逸らす彼女はとても可愛い。「いただくよ」と答えるとすっと差し込まれたストローからひんやりと美味しい水を口に含む。不用意に口の端から少し溢してしまったら、事も無げに持っていたタオルで口許を拭ってくれた。
「この部屋、空調が整っているから乾燥しますからね。」とひんやりしたタオルでまた口許を拭ってくれる最上さんは本当の天使に見えた。
「お願い…が、あるん、だけど…」
「はい?なんですか?」
「手を…」
点滴の入っていない方の手を最上さんの方に差し出した。最上さんは俺の手をそっと取ると「夜は冷えますからね。」と優しく毛布の中に戻そうとする。俺は彼女の手を握って告げた。
「手を、握ってて、くれないか…?」
「敦賀さん、なんだか子供みたい」と最上さんはクスクス笑って、俺の手をベッドに置き去りにして離れていった。俺は精一杯の願いが叶わなかった事に気を落として小さくため息をついて目を閉じた。
そんな俺の右手に戻ってきた温もり。俺は驚いて目を開けた。すると俺の右手は最上さんの両手に包まれていた。「えっ?」と最上さんの顔を見ると「だって、中腰のままじゃずっと握っていられないじゃないですか。」と頬を染めてそっぽを向いた。「ありがとう、うれしいよ。」俺はその言葉をいうのが精一杯で、薬の効能でまた眠りに落ちたようだ。
次に目覚めたのは窓から差し込む朝日のせいだった。俺の右手は最上さんの両手に包まれたままだった。最上さんはベッドに突っ伏すように眠っていた。俺の右手は容易に彼女の拘束を逃れ、彼女の栗色の髪を撫でる事が出来た。
最上さんが目を醒ました。
「ありがとうキョーコちゃん」
たまには病気に負けるのもいいかもしれないと思ったのは絶対に秘密。
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