一昨日くらいからお腹が痛くなった。発熱もあって短いスパンで嘔吐もあったからまた風邪でも拗らせたのかと思っていた。珍しく風邪薬を飲んでも症状は収まらず、逆に酷くなっていった。
強めの痛み止みと嘔吐止めを飲んで撮影に臨んでいたが、最後のシーンで監督から『カット、OK』の声がかかった瞬間に今まで俺を支えていた物が消えてしまったかのように腹痛が襲ってきた。俺はその場で踞り、最後見たのは心配そうに俺の顔を覗き込む最上さんの顔。
次に名前を呼ばれて意識がふわっと浮上した。見慣れない天井、白い壁、そして傍にはまた心配そうに俺の顔を覗き込む最上さんの顔。
「あれ?俺の…いったい…?」
「スタジオで倒れられたんです。体調悪いならもっと早くおっしゃって下さればよかったのに…」
「ごめん、心配させたね?」
「いえ、それはいいんですが…。」
彼女は言葉を濁す。俺は体に違和感を感じて見回すと左手には点滴の針が入っていて、指には何かを測る機械が挟まっている。右手を見ると血圧を測るための器具。何より酸素マスクをかけられている。
「俺、どうしたの?」
「蓮、急性虫垂炎だそうだよ。痛いのかなり我慢してただろう。もう少し遅かったらかなり危なかったらしいぞ。」と最上さんの後ろから聞こえたのは社さんの声。
「すいません、また風邪かと思って…。」
「緊急手術だったんだ。明日の昼から食事も出る。一週間くらい休め。」
「えっ?そんなにぃ?」