撮影中****
上野につつかれてみのるはハッと顔を上げた。その先にまゆみの顔があって視線がぶつかる。一瞬固まってまた下を向いてしまったみのる。
「社長っ!しっかりしてよ。私の仕事量がこれ以上になるならギャラは倍以上もらっちゃうんだからっ!」とひとみの声。
「おいおい、それは困るよひとみちゃん。ほら、みのる、何とか言えって…。」
とまたみのるを上野がつつく。
「…高橋さん、お願い出来ると、嬉しい…」と小さな、本当に小さな声で呟くみのる。ひとみは「ほら、社長もああ言ってるしまゆみちゃんに異論はないわね、早速仕事よ!」と言うが早いかまゆみをソファから立たせて奥の部屋に引っ張って行く。まゆみはひとみにひっぱられながら何度も後ろを振り返って困った顔をしていたが上野はにこやかに手を振って見送った。
「みのる、なんでもっとちゃんと話をしないんだよ…」
「…ごめん」
「俺はいいけどさ、まゆみちゃんはそんなんじゃ振り向いてくれないぜ。」
「俺は…別に…」
「『別に…』って奴がそんな顔するのか?しっかりしてくれよ、社長っ!」
上野はまるまったみのるの背中を強く叩くとソファから立ち上がり、四人分のカップを持ってキッチンへ向かった。
まゆみはひとみに連れられてリビングの奥の部屋に入った。そこは広くてゆったりとしたリビングとは全く雰囲気が違う、簡素な事務室だった。
「私はここでファックスのやり取りや書類の整理、あとは社長のスケジュール管理なんかをしているの。副社長が出来すぎるから本当に困っちゃうわよ。」とひとみは笑いながら話す。
まゆみは部屋の入口近くで呆然と立ち尽くしていた。なんだかよく解らない内に連れてこられた高級マンションで、大学の友人達が立ち上げたというオフィス。そこで嬉々として仕事をする幼なじみ。自分の知らないところで確実に時間は流れている事を思い知る。そしてまゆみは自分の所在のなさを痛感していた。
「ほら、まゆみちゃん、突っ立ってないでこっちにきてっ!」とひとみの声に弾かれてはっと顔をあげるとひとみが笑顔で手招きしていた。
「まゆみちゃんはパソコンは得意?」
「得意じゃないけど必要最低限はなんとか…」「じゃぁ、この書類の集計と整理をお願いね。」
と一抱えもある書類を示す。そして問答無用でまゆみをパソコンデスクに座らせて、自分は自分で仕事にとりかかる。まゆみは言われるままに作業を始めた。
上野につつかれてみのるはハッと顔を上げた。その先にまゆみの顔があって視線がぶつかる。一瞬固まってまた下を向いてしまったみのる。
「社長っ!しっかりしてよ。私の仕事量がこれ以上になるならギャラは倍以上もらっちゃうんだからっ!」とひとみの声。
「おいおい、それは困るよひとみちゃん。ほら、みのる、何とか言えって…。」
とまたみのるを上野がつつく。
「…高橋さん、お願い出来ると、嬉しい…」と小さな、本当に小さな声で呟くみのる。ひとみは「ほら、社長もああ言ってるしまゆみちゃんに異論はないわね、早速仕事よ!」と言うが早いかまゆみをソファから立たせて奥の部屋に引っ張って行く。まゆみはひとみにひっぱられながら何度も後ろを振り返って困った顔をしていたが上野はにこやかに手を振って見送った。
「みのる、なんでもっとちゃんと話をしないんだよ…」
「…ごめん」
「俺はいいけどさ、まゆみちゃんはそんなんじゃ振り向いてくれないぜ。」
「俺は…別に…」
「『別に…』って奴がそんな顔するのか?しっかりしてくれよ、社長っ!」
上野はまるまったみのるの背中を強く叩くとソファから立ち上がり、四人分のカップを持ってキッチンへ向かった。
まゆみはひとみに連れられてリビングの奥の部屋に入った。そこは広くてゆったりとしたリビングとは全く雰囲気が違う、簡素な事務室だった。
「私はここでファックスのやり取りや書類の整理、あとは社長のスケジュール管理なんかをしているの。副社長が出来すぎるから本当に困っちゃうわよ。」とひとみは笑いながら話す。
まゆみは部屋の入口近くで呆然と立ち尽くしていた。なんだかよく解らない内に連れてこられた高級マンションで、大学の友人達が立ち上げたというオフィス。そこで嬉々として仕事をする幼なじみ。自分の知らないところで確実に時間は流れている事を思い知る。そしてまゆみは自分の所在のなさを痛感していた。
「ほら、まゆみちゃん、突っ立ってないでこっちにきてっ!」とひとみの声に弾かれてはっと顔をあげるとひとみが笑顔で手招きしていた。
「まゆみちゃんはパソコンは得意?」
「得意じゃないけど必要最低限はなんとか…」「じゃぁ、この書類の集計と整理をお願いね。」
と一抱えもある書類を示す。そして問答無用でまゆみをパソコンデスクに座らせて、自分は自分で仕事にとりかかる。まゆみは言われるままに作業を始めた。