「事故当日に最上くんの母親には連絡を入れた。」
ローリーは重い口調で話し始めた。
「母親の『最上冴菜』という人物は確かにいた。だが、実際に対応したのはその代理人だった。」
「…っ!」
「代理人によると、『当方無関係』との事だった。手続きや制度上必要な書類や署名捺印には応じるがそれ以外は対応しないという事務的な回答だった。」
「…えっ?」
蓮の顔には信じられないとはっきり書かれてあった。
「彼女は18歳になったとはいえ未成年だからな。これを機会に俺が後見人になる事にして手続きを進めたんだ。」
「…、はい。」
「そんな時にあのご夫婦が怒鳴り込んでこられたんだよ。」
ローリーはだるま屋夫妻とのやりとりを蓮に話して聞かせた。蓮は黙って聞いていたが、ローリーが話し終えると「なんだか妬けますね…。」と俯いてため息をついた。
「バカ野郎。そんなご両親からお前は最上くんを預かったんだ。お前自身記憶がない分仕方ないかも知れないが、今の彼女を受け止めるのはお前の役目だ。」
「はい、勿論です。」
「解っているならいい。」
「ただ…」
「なんだ、まだ不満があるのか?」
「いえ…。キョーコちゃんに最初に思い出してもらったのが俺じゃないって事がなんだか悔しくて…。」
「ふっ、バカ野郎。」
「そうは言っても…」
「お前達は思い出すも何も、新たな人生を一緒にスタートしたんじゃねえか。それ以上に何を望む?」
「はい、そうなんですが…」
「お前は欲張りだな。そんな事だとその内最上くんに愛想尽かされるぞっ。」
「そ、それは困りますっ!俺はもう…キョーコちゃんなしではやっていけない…」
「ほう、やけに素直じゃねえか。恋愛音痴のくせによっ?」
「なんなんですか、それは?!」
「いや、こっちの話だ。」
ローリーは楽しそうに笑った。蓮は複雑な気分だったが、『この人に敵う訳がない』と半ば諦めてため息をつく。そして、すっと立ち上がり、「キョーコちゃんを連れて帰ります。」と告げる。
「おう、今日はゆっくり休め。」
「ありがとうございます。」
蓮は頭を下げて部屋を出ようとした。その背中にローリーから声がかかる。
「きっとこれから最上くんは不安定になるだろう。お前も大変だろうがしっかり支えてやってくれ。これは後見人の俺と東京の両親からの頼みだ。」
「はい、全身全霊を以て!」
その表情には蓮の決意が刻まれていた。
ローリーは重い口調で話し始めた。
「母親の『最上冴菜』という人物は確かにいた。だが、実際に対応したのはその代理人だった。」
「…っ!」
「代理人によると、『当方無関係』との事だった。手続きや制度上必要な書類や署名捺印には応じるがそれ以外は対応しないという事務的な回答だった。」
「…えっ?」
蓮の顔には信じられないとはっきり書かれてあった。
「彼女は18歳になったとはいえ未成年だからな。これを機会に俺が後見人になる事にして手続きを進めたんだ。」
「…、はい。」
「そんな時にあのご夫婦が怒鳴り込んでこられたんだよ。」
ローリーはだるま屋夫妻とのやりとりを蓮に話して聞かせた。蓮は黙って聞いていたが、ローリーが話し終えると「なんだか妬けますね…。」と俯いてため息をついた。
「バカ野郎。そんなご両親からお前は最上くんを預かったんだ。お前自身記憶がない分仕方ないかも知れないが、今の彼女を受け止めるのはお前の役目だ。」
「はい、勿論です。」
「解っているならいい。」
「ただ…」
「なんだ、まだ不満があるのか?」
「いえ…。キョーコちゃんに最初に思い出してもらったのが俺じゃないって事がなんだか悔しくて…。」
「ふっ、バカ野郎。」
「そうは言っても…」
「お前達は思い出すも何も、新たな人生を一緒にスタートしたんじゃねえか。それ以上に何を望む?」
「はい、そうなんですが…」
「お前は欲張りだな。そんな事だとその内最上くんに愛想尽かされるぞっ。」
「そ、それは困りますっ!俺はもう…キョーコちゃんなしではやっていけない…」
「ほう、やけに素直じゃねえか。恋愛音痴のくせによっ?」
「なんなんですか、それは?!」
「いや、こっちの話だ。」
ローリーは楽しそうに笑った。蓮は複雑な気分だったが、『この人に敵う訳がない』と半ば諦めてため息をつく。そして、すっと立ち上がり、「キョーコちゃんを連れて帰ります。」と告げる。
「おう、今日はゆっくり休め。」
「ありがとうございます。」
蓮は頭を下げて部屋を出ようとした。その背中にローリーから声がかかる。
「きっとこれから最上くんは不安定になるだろう。お前も大変だろうがしっかり支えてやってくれ。これは後見人の俺と東京の両親からの頼みだ。」
「はい、全身全霊を以て!」
その表情には蓮の決意が刻まれていた。