マリアが持ってきたアルバムを四人で囲んでページを捲っていく。主催したマリアとキョーコが招待客とにこやかに映る写真の数々。その枚数からもその日のパーティーが盛大だった事が伺える。
12月24日といえば一般的にはクリスマスイブ。マリアにとっては誕生日であり母親の命日に当たる。その事でずっと苦しんできたマリアの心の痼を取ったのがキョーコだったのだとマリアが話ながら一枚一枚写真を眺めていく。
「この男性が私のお父様ですわ!」とマリアが嬉しそうに写真を指差す。そこには抱き上げたマリアを優しく見つめる男性と、その愛を一身に受けて満面の笑みでポーズを取るマリア。その隣にはローリーが映っていた。
そして、その先に進むと中年の夫婦とキョーコが映る写真があり、キョーコはその写真に目が釘付けになった。
「いたっ!」
本当に小さな声だった。でも、その声は歓喜を含んで、同じくらい不安に満ちていた。そしてキョーコは身動きできなくなってしまった。

「キョーコちゃん、大丈夫だから…。」
テーブルに置かれたキョーコの右手に上から重ねるように置かれた蓮の右手はとても暖かい。蓮は重ねた掌にキョーコの震えを感じて力を入れてしまった。それでも震えが止まらないので、左手でキョーコの肩を抱き寄せる。抵抗なく自分の体にもたれ掛かる体を抱き止めてやると、キョーコは蓮の胸に顔をうずめて泣き出してしまった。

「やっと…見つけた…私、の…記憶の欠片…。」
その後は何か言おうとして声を出してはいたが言葉にはならず、蓮の胸に音として響くだけだった。

キョーコは日頃の疲れと探し人が見つかった安堵でそのまま泣き疲れて眠ってしまった。蓮はローリーに指示された客間のベッドに彼女を横たえてリビングに戻ってきた。マリアはまだ時間が早いのでキョーコの傍に付いていると客間に残った。

「社長…」
「ご両親ではない。下宿先のご夫婦だ。」
「…っ」
「まぁ、東京での両親と言っても過言ではない。」
「…、じゃあなぜ…?」
「お二人は事故の直ぐ後、お前達が東京に戻る前に俺のところに来られた。最上くんに記憶がない事を説明して、お帰りいただいたんだ。『キョーコを頼む』と残して。俺は全責任を以て預かる事を約束した。」
「…そうですか。」
「不服なのか?」
「いえ。なら、実の両親は…」
「有名無実だ。」
ローリーの顔が苦々しく歪んだ。