サイド連

最上さんはひとしきり泣いた。そしてまだしゃくりあげながらも顔を上げて俺に謝ろうとする。
「ごめ、なさい…ヒッ、泣いちゃって…ヒッ、こんなつもり、じゃ…ヒッ」
「構わないよ。俺の胸ならいつでも空けてある。」
「あ、ヒッ、ありがとう…ございます。」
そういうと俺の胸から顔を離して見上げてくる。とても可愛いよ。最上さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「そんな顔、反則ですよっ!」小さく呟かれる抗議は俺は苦笑するしかできず、最上さんが胸にコツンと額をぶつけてきた。「君のそんな仕草だって反則だよ?」
思った事がそのまんま口から出た。
最上さんがぷぅっと頬を膨らませるので思わず片方を突っついて凹ませると「もうっ、敦賀さんは意地悪ですっ!」と可愛く抗議されてしまった。
「いつもいつも、余裕たっぷりで「うん」、そうやってずっと大人で…「うん」」最上さんの額にくっついてしまった前髪を払ってやる。
最上さんの目尻にまた涙が溜まり始める。
「意地悪で「うん」、子供みたいに屁理屈捏ねるし…「うん」、」
今度はその涙を唇で拭う。右目を、左目を…
「いつも作り物みたいに綺麗な笑顔で…「うん」、急に不謹慎になるし…「うん」、私はいちまでも子供扱いで…「うん」、」
俺は最上さんの顔中にキスの雨を降らせ始めた。伏せられた瞼に、額に、頬に顎に、鼻の頭に…、もう唇以外の触れていないところがないほどのキスの雨を受けながらも最上さんは抗議を続ける。
「ご飯食べないし「うん」、眠らないし「うん」、……」
「もう終わり?」
「えっ?」
「俺への抗議はもう終わりかな?」
「あの、いえっ、そんなつもりじゃ…」
この位で勘弁してくれないと俺、泣いちゃうよ?
「そんな俺は…嫌い?」
「…えっ?」
「好きじゃない?」
「……っ!」
この質問はやっぱり意地悪だったかな?
俺は両手で最上さんの頬をつつむように触れて、最後まで触れずにおいた唇に自身のそれを重ねた。
最上さんは驚きで体を強ばらせたけど、ゆっくりと力をぬいて受け入れてくれた。離れる俺の唇を追いかけて呟いた。
「嫌い…じゃないです」

やっと捕まえた俺の想い人。最初の出会いから10余年を越えて今、俺の腕の中に収まる彼女は恥ずかしそうに俯いている。君の存在全てが可愛くて愛しくて堪らないよ。
だから、ずっと俺の傍で輝いて、そして俺を支えてください、最上キョーコさん。

End